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総務省が700MHz帯を解放。楽天×ASTの衛星通信参入が日本の通信業界を塗り替える理由、まるっと整理します

地球と宇宙を繋ぐ衛星ネットワークを落ち着いた表情で眺める女性のイラスト

📌 この記事が30秒でわかる!3行まとめ

  • 2026年6月、総務省が700MHz帯の衛星直接通信を解禁。楽天×ASTが日本で本格参入へ
  • ASTの巨大衛星アンテナ(約220㎡)は既存スマホにブロードバンド接続を提供できる世界初に近い設計
  • 国策J-LEO補助金(最大1500億円)をめぐり楽天・AST陣営とKDDI・Starlink陣営が競争中

2026年6月24日、日本の通信インフラ史にひとつの転換点が訪れました。

総務省の情報通信審議会が、700MHz帯を使った低軌道衛星とスマートフォンの直接通信を認める答申を行ったのです。

この答申を受けて、楽天モバイルは米国のAST SpaceMobileと合弁会社を2026年内に設立する方針を明らかにし、同年第4四半期(10〜12月)からサービスを段階的に開始する計画を発表しました。

「スマホが衛星と直接つながる」という話は以前から出ていましたが、今回の答申でいよいよ制度的な基盤が整いました。楽天×ASTの参入が日本の通信業界にとって何を意味するのか、背景から丁寧に整理していきます。

総務省が700MHz帯を解放。楽天×ASTの衛星通信参入が日本の通信業界を塗り替える理由、まるっと整理しますインフォグラフ
目次

2026年6月の答申:700MHz帯解放が意味すること

総務省の建物を背景に書類を確認する知的な女性のイラスト

従来の衛星通信制度とは何が違うのか

これまでの衛星通信には、Ku帯やKa帯と呼ばれる高い周波数帯が使われてきました。これらは直進性が高く、専用のパラボラアンテナを正確な方向に向ける必要があります。Starlinkの専用ディッシュ端末がその典型です。

また、国内で先行して制度整備が進んだ2GHz帯の衛星直接通信(KDDIなどが利用)には、地上基地局との干渉を防ぐため、同一周波数で9.9km以上の離隔距離を設けるなどの厳格な技術条件が課されていました。

今回解放された700MHz帯の最大の特徴は、携帯電話事業者がすでに地上で使っている周波数をそのまま宇宙からも使えることです。ユーザーのスマートフォンに改修は不要で、特別なアプリも一切必要ありません。

NTNとは何か:非地上系ネットワークの社会実装

「NTN(Non-Terrestrial Network)」という概念があります。地上の基地局ネットワークを補完・代替する、衛星や成層圏を飛ぶ飛行体を使った通信インフラのことです。

今回の答申は、NTNがコンセプトから「社会実装」へと移行する転換点とも言えます。地上インフラのリーチが物理的に届かない領域を、宇宙側から埋める。この発想が、日本で制度として認められたということです。

他社の衛星通信制度との差異

KDDIやNTTドコモがすでに利用しているSpaceXのStarlinkは、主に2GHz帯などを使用しています。これに対して楽天×ASTの700MHz帯は電波の回折性が高い「プラチナバンド」であり、建物の陰や山間部の障害物を回り込みやすいという特性があります。

制度の差というよりも「どの周波数帯を選ぶか」が、通信品質の方向性の根本的な違いを生んでいます。

ASTの技術が特別な理由:衛星の仕組みを整理する

巨大なフェーズドアレイアンテナを広げた衛星を見上げて驚く女性のイラスト

テニスコート大のアンテナが低軌道を飛ぶ

AST SpaceMobileの衛星「BlueBird Block 2」は、展開すると約220平方メートルに及ぶフェーズドアレイアンテナを形成します。低軌道(高度500〜700km)を飛ぶ衛星としては規格外の大きさです。

なぜそれほど大きなアンテナが必要かというと、地上のスマートフォンが発する電波は非常に微弱(1ワット未満)だからです。宇宙空間でその弱い信号を確実に拾うには、アンテナの開口面積を最大限に広げる必要がありました。

また、秒速約7.5kmで移動する衛星と地上のスマホが通信すると、ドップラー効果(移動体による周波数のズレ)が強く発生します。ASTはこれを衛星側のソフトウェアで補正する仕組みを持っており、スマホ側は「地上にある普通の基地局」と会話しているように振る舞えます。

StarlinkとASTの根本的な戦略の違い

SpaceXのStarlinkは6,500基以上の衛星を低軌道に展開する「高密度・多数衛星」の戦略です。衛星1基のサイズは比較的小さく、高密度なコンステレーションでカバレッジを確保しています。

ASTは対照的に「少数・高性能」の戦略をとります。2026年末時点での目標は45〜60基。数は少ないですが、1衛星あたりの処理能力と通信帯域幅(最大10GHz)が極めて高い設計になっています。

Starlinkが「カバレッジの面積で勝負」するのに対し、ASTは「1衛星あたりの通信品質の深さで勝負する」という棲み分けです。

既存スマホがそのまま接続できる仕組み

ASTの衛星は、地上のLTE/5Gコアネットワークと直接統合されています。スマートフォン側からは、衛星が「標準的なLTEの基地局(eNB)」として見えるように設計されています。

この設計により、既存の4G/5G対応スマホは何の改修もなく衛星通信に接続できます。地上の電波が届かなくなると、自動的に衛星へ切り替わる仕組みです。

主要3社の衛星通信オプションを比較してみた

「衛星とスマホが直接つながる」と言われても、料金や条件が各社でどう違うのか、私は最初よくわかりませんでした。そこで各社の発表内容を並べて、私なりに比較表を作ってみました。

事業者料金開始・提供状況
NTTドコモ(docomo Starlink Direct)当面無料2026年4月27日開始・全ユーザー対象
ソフトバンク(Starlink活用)2026年7月以降 月額1,650円(それまで無料)提供中
楽天モバイル×AST(700MHz帯)未定2026年第4四半期開始予定

私がこの表を作って気づいたのは、楽天×ASTだけが開始時期も料金もまだ「これから」という段階にあることです。ただし記事で触れたとおり、700MHz帯は電波の回り込みやすさに強みがあるプラチナバンドなので、私は「後発でも品質面で追いつける可能性はある」と感じました。実際にサービスが始まったら、料金と使い勝手の両方を私自身も確認してみたいと思っています。

楽天の財務戦略:株売却から合弁設立への転換

ホワイトボードの前で財務戦略を整理している落ち着いた女性のイラスト

600億円分のAST株をなぜ売ったのか

2026年4月から5月にかけて、楽天グループはAST株式の大部分(約1,551万株)を市場で売却し、約3億9,200万ドル(約600億円)の現金を確保しました。この売却で楽天のAST保有比率は10%超から5.3%まで低下しています。

一部では「提携関係が後退したのでは」という見方もありましたが、実態は異なります。初期投資(数千万ドル規模)から莫大なキャピタルゲインを得て、それを国内モバイル事業の設備投資資金に充当したのです。

これは典型的なベンチャー投資の「キャッシュアウト」戦略です。事業が本格化する前の成長ステージで株式価値が高まったタイミングで一部を売却し、事業資金を確保する合理的な判断と言えます。

「出資」から「事業の共同運営」への移行

株式売却完了の翌月には、楽天グループ代表の三木谷浩史氏がASTとの国内合弁会社(ほぼ対等出資で楽天主導)を2026年内に設立する方針を発表しました。

つまり「財務投資家としての出資」から「事業パートナーとしての共同運営」へとモードが変わったのです。合弁会社を通じてASTの衛星を複数基購入・運用し、日本向けの低軌道衛星通信網を独自に構築する計画です。

資本関係を薄めながら事業推進の主導権を持つという、巧みな構造設計と言えます。

EBITDA黒字化が示す新局面

2025年度通期(1〜12月)の連結決算において、楽天モバイルはEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)の通期黒字化(288億円)を達成しました。売上収益も前年同期比9.6%増の4,828億円と成長軌道に乗っています。

ルーラルエリア(人口減少地域)への物理的な基地局投資を衛星に置き換えることで、今後の設備投資をさらに絞り込みながら収益性を高めるシナリオが見えてきています。

J-LEO補助金と経済安全保障:国策の観点から整理する

日本地図と資料を前にインフラ政策について考える女性のイラスト

SpaceX依存リスクと日本の自律性確保

KDDI・ドコモ・ソフトバンクの3社がすべてSpaceX(Starlink)と組んでいるという現状は、安全保障の観点から日本政府に懸念をもたらしています。

イーロン・マスク氏が率いるSpaceXは米国の民間企業です。有事の際に日本の重要通信インフラが外国の一民間企業の意思決定に依存するリスクは、政策立案者にとって無視できない問題です。

これを受けて総務省は令和7年度(2025年度)補正予算で1,500億円を計上し、「自律性確保に向けた低軌道衛星通信インフラ整備事業(J-LEO)」の公募を開始しました。国内に衛星管制局や地上設備を設置し、日本で完結・制御できる通信インフラを整備する事業者に、設備費の半額(最大1,500億円)を補助する仕組みです。

軌道傾斜角53度変更という戦略的決断

楽天・AST陣営は、J-LEOの要件を満たすために衛星の軌道計画を大幅に変更しています。当初は赤道寄りの軌道傾斜角でしたが、これを53度に変更することで、北海道(北緯43〜45度)を含む日本全土の上空を効率的にカバーできる軌道設計に切り替えました。

この変更はITU(国際電気通信連合)への申請が必要な大きな決断で、J-LEO補助金への対応を明確に意識したものと見られています。

能登半島地震が示した地上インフラの限界

2024年の能登半島地震では、最大839の携帯基地局が停波しました。半島地形と土砂崩れにより道路が寸断され、移動電源車の進入も長期間困難な状況が続きました。

「地上インフラに依存しない通信の冗長化」が国家的課題として明確になった出来事です。衛星から直接スマホに届く通信は、この課題に対する現実的な解のひとつとして位置づけられています。

通信業界の勢力図はどう変わるのか

日本地図の前に立ち通信インフラの資料を確認する女性のイラスト

ドコモの「当面無料」がもたらす市場インパクト

NTTドコモが2026年4月27日に開始した「docomo Starlink Direct」は、ahamoを含む全ユーザーに申込み不要・当面無料で提供されています。

これは衛星通信を「有料オプション」から「標準機能」へとポジションを変える動きです。ソフトバンクも2026年7月以降は月額1,650円のオプションとする一方、それまでは無料提供としており、メガキャリア3社は「衛星通信をインフラの当然」として打ち出しています。

この流れの中で楽天がどこに立つかは、通信品質(特にデータ速度と音声対応)で明確な差を実証できるかどうかにかかっています。

楽天が優位に立つ条件と負けるシナリオ

楽天が優位に立つための条件は、2026年第4四半期のサービス開始を予定通りに果たし、「動画がサクサク見られる衛星通信」という品質を初日から実証できるかどうかです。

ブロードバンド品質の衛星通信を日常的な形で最初に提供できれば、「楽天=衛星通信の本命」という認知を形成できる可能性があります。

一方、ASTの衛星打ち上げが遅延した場合、メガキャリア3社が「衛星通信=Starlink」という認識を市場に先に定着させてしまうリスクがあります。

2030年代の通信インフラ予測

長期的には、都市部の高トラフィックエリアは地上の5G・6G基地局が担い、郊外・山間部・海上は衛星が担うという役割分担が定着していくと見られます。

採算の合わないルーラル基地局は更新期を迎えたものから順次撤去され、衛星カバレッジに置き換えられていくでしょう。自動運転、農業IoT、ドローンのBVLOS(目視外飛行)、山岳救助。こうした用途での衛星通信の役割は、2030年代にかけてさらに大きくなると予測されています。

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よくある質問

地球と宇宙を繋ぐ衛星ネットワークを落ち着いた表情で眺める女性のイラスト

Q. 700MHz帯の衛星直接通信は、なぜ今まで認められていなかったのですか?

A. 既存の地上LTE基地局との干渉問題があり、技術的・制度的な整備が必要でした。今回の答申で技術条件が整理され、制度的に解禁されました。

Q. ASTとStarlinkはどちらが将来優位になりますか?

A. Starlinkはカバレッジの広さで優位、ASTはブロードバンド帯域幅の深さで優位と評価されています。長期的には役割が棲み分けられる可能性が高いです。

Q. 楽天がAST株を売却したのは提携関係が弱まったから?

A. いいえ。初期投資から得たキャピタルゲインを事業投資に転換する財務戦略です。売却直後に合弁会社設立を発表しており、事業関係は深まっています。

Q. J-LEO補助金はいつ交付が決まりますか?

A. 2026年5月末に公募が締め切られており、現在審査中です。楽天・AST陣営とKDDI・SpaceX陣営が主な候補と見られています。

Q. 衛星打ち上げが失敗した場合はどうなりますか?

A. ASTはBlueBird 7の打ち上げ失敗後、迅速にSpaceXのロケットへ切り替えるなど機動的に対応しています。ただし遅延リスクは存在します。

Q. 楽天モバイルの財務状況は改善していますか?

A. 2025年度にEBITDAの通期黒字化を達成しました。衛星通信でルーラル向け基地局投資を削減できれば、さらなる収益改善が見込まれます。

Q. 自動運転やドローンへの活用は期待できますか?

A. 山間部や海上での自動運転の遠隔監視、ドローンのBVLOS飛行の通信リンクとして、衛星直接通信が重要なインフラになると期待されています。

Q. 中国の衛星通信はどんな状況ですか?

A. 国家主導で数万基規模のLEOコンステレーションを推進しており、Huaweiは静止衛星と直接通信できるスマホを国内販売しています。米中の宇宙インフラ覇権争いの一側面です。

Q. Amazon(Project Kuiper)との違いは何ですか?

A. KuiperはNTTドコモと提携し、主にバックホールや企業向けサービスが中心です。スマホへの直接通信よりも法人・インフラ向けのアプローチが主軸となっています。

Q. 衛星のスペースデブリ問題への対策は?

A. ASTの巨大衛星はデブリリスクが高いため、推進器での回避制御と、将来的にはAstroscaleなどの軌道上サービス企業との連携が業界的な課題として認識されています。

まとめ

  • 2026年6月の総務省答申により、700MHz帯を使った衛星直接通信が制度的に解禁された
  • ASTの巨大フェーズドアレイアンテナと独自設計が、既存スマホへのブロードバンド直接通信を可能にする
  • 楽天によるAST株売却は財務戦略の転換で、合弁会社設立により事業推進の深化が図られている
  • J-LEO補助金(最大1,500億円)の獲得競争は楽天・ASTとKDDI・Starlinkの事実上の一騎打ち
  • 楽天の成否は2026年第4四半期のブロードバンド品質での市場参入にかかっている

日本の通信インフラが「地上から宇宙へ」と広がる時代の入り口に、私たちは立っています。今後の動きをぜひ注目して見ていきましょう。

参考・出典

本記事は、楽天モバイル、AST SpaceMobile、総務省、通信関連メディア、報道機関などの公開情報をもとに、衛星とスマートフォンの直接通信、700MHz帯の活用、日本の通信インフラ再編の流れについて整理して作成しています。

  • 楽天モバイル株式会社|AST SpaceMobileと連携した衛星とスマートフォンの直接通信サービスに関する発表
  • 楽天モバイル株式会社|2026年中の衛星-to-mobileサービス開始に向けた計画
  • 楽天モバイル株式会社・AST SpaceMobile|日本初の低軌道衛星と市販スマートフォン間のビデオ通話成功に関する発表
  • AST SpaceMobile|BlueBird衛星、衛星通信ネットワーク、Direct-to-Device通信に関する公式情報
  • 総務省|情報通信審議会による700MHz帯非静止衛星通信システムの技術的条件に関する答申
  • ケータイ Watch|楽天モバイルが目指す衛星ダイレクト通信と700MHz帯の使用ルールに関する報道
  • Reuters|楽天の衛星通信事業に対する政府支援・AST SpaceMobileとの連携に関する報道
  • Payload Space|日本のDirect-to-Device衛星通信ネットワークと700MHz帯活用に関する報道
  • 3GPP・NTN関連資料|非地上系ネットワーク、衛星通信と携帯網の統合に関する技術情報
  • 楽天グループ・楽天モバイルの決算資料、通信インフラ投資、衛星通信サービスに関する公開情報

なお、衛星とスマートフォンの直接通信サービスは、技術開発、衛星打ち上げ、周波数利用、総務省の制度整備、通信品質の検証などに左右されるため、開始時期やサービス内容が変更される可能性があります。

また、700MHz帯の利用条件、対応端末、通信速度、利用可能エリア、災害時の優先利用の有無などは、今後の公式発表を確認する必要があります。最新情報は、楽天モバイル、AST SpaceMobile、総務省などの公式情報をご確認ください。

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