【3行まとめ】
✅ 年金の「振込額」は、支給額から税金・社会保険料などを引いた後の金額です
✅ 前回より少なくなる理由は税金・介護保険料・在職老齢年金など複数あり、8月だから一律に減るわけではありません
✅ 理由を知りたいときは、年金振込通知書の控除欄を確認するのが一番の近道です
こんにちは、まるです。「年金が前回より振込額が少ない気がする」——そう感じて検索してきた人、多いのではないでしょうか。私自身、最初にこのテーマを調べ始めたとき、「8月は税金の本徴収が始まるから減る」という説明をあちこちで見かけました。でも実際に一次資料を確認していくと、それは全員に当てはまる話ではないとわかってきました。この記事では、年金の振込額が変わる仕組みを、税金・保険料の天引きの構造から整理し、実際に何を確認すればいいのかをまとめます。
年金が前回より少ないのはなぜ?
まず整理しておきたいのは、私たちが通帳やアプリで見ている「振込額」は、年金の「支給額(額面)」そのものではないということです。年金からは税金や社会保険料が天引き(特別徴収)されるため、
振込額 = 年金の支給額 - 税金・社会保険料等
という式になります。つまり、支給額自体は変わっていなくても、天引きされる金額が変われば、振込額は前回と変わってきます。「年金が減らされた」と感じても、実際には年金額そのものが下がったのではなく、控除される項目の金額が変動しているケースが多いんです。この構造を最初に押さえておくと、あとの説明がぐっと理解しやすくなります。
私が最初に勘違いしていたこと
正直に言うと、私自身もこのテーマを調べ始める前は「年金額が減った=機構のミスか制度改悪」だと思い込んでいました。でも一次資料を読み込んでいくうちに、多くのケースでは「支給額」ではなく「控除額」の方が動いているだけだと分かってきました。この勘違いをしたまま検索結果の一部の記事を鵜呑みにしてしまうと、必要以上に不安になってしまうと思います。だからこそ、まずは式の構造から理解してほしいというのが、この記事を書いた一番の動機です。
年金から何が天引きされる?

年金から天引きされる可能性がある項目は、主に次の通りです。
所得税
一定額以上の年金を受け取っている場合、所得税が源泉徴収されます。扶養親族等申告書の提出状況によって税額が変わることもあります。
住民税
前年の所得をもとに算定された住民税が、年金から天引きされることがあります(特別徴収)。
介護保険料
65歳以上の人は、原則として介護保険料が年金から天引きされます。金額は前年の所得や居住する自治体の保険料率によって決まります。
国民健康保険料・後期高齢者医療保険料
74歳以下で国民健康保険に加入している人は国民健康保険料が、75歳以上の人は後期高齢者医療保険料が、それぞれ年金から天引きされることがあります。
すべての受給者からすべての項目が天引きされるわけではありません。所得状況や年齢、居住自治体によって対象になる項目は人それぞれ異なります。ここを一括りにして考えてしまうと、「自分はなぜこんなに引かれているんだろう」と混乱しやすいので、注意が必要です。
天引きされないケースもある
一定額に満たない年金額の人や、口座振替など別の方法で保険料を納めている人は、年金からの天引き(特別徴収)ではなく、別の形で納付しているケースもあります。「周りの人は天引きされているのに、自分は違う」という場合も、それ自体が異常というわけではなく、納付方法の違いによるものであることが多いです。気になる場合は、お住まいの自治体に納付方法を確認してみるとよいと思います。
4月・6月・8月と10月以降で天引きが変わることがある

仮徴収と本徴収の仕組みを整理してみた
介護保険料や住民税などの特別徴収には、「仮徴収」と「本徴収」という考え方があります。私も最初この用語を見たとき、正直ピンときませんでした。ただ、いくつかの自治体の公式情報を確認していくと、一般的な運用としては次のような整理になっていることがわかりました。
- 4月・6月・8月:前年度の金額をベースにした「仮徴収」
- 10月・12月・2月:その年の所得等をもとに確定した金額での「本徴収」
年間の保険料が確定するのが年の途中になるため、確定前の期間は暫定的な金額(仮徴収)で天引きし、確定後に残りの金額を調整して天引きする(本徴収)、という流れが一般的な仕組みとして自治体から説明されています。
ただし、これはあくまで一般的な運用の一例であり、すべての自治体・すべての受給者に一律に同じスケジュールが当てはまるとは限りません。「8月だから必ず天引きが増える」「10月だから必ず本徴収で減る」と単純化してしまうのは正確ではなく、実際の徴収額は自治体ごとのルールや個人の所得状況によって変わります。自分の場合がどうなっているかを知りたいときは、お住まいの自治体から届く通知書を確認するのが確実です。
なぜこのような分割の仕組みになっているのか
年間の保険料額は、その年の所得が確定してから算定されます。そのため、年度の前半は「まだ確定していない金額」を暫定的に徴収し、後半で確定額との差額を調整する、という流れが取られているというのが一般的な説明です。この仕組み自体は保険料を段階的に無理なく徴収するための工夫であり、必ずしも「途中で急に負担が増える」ことを意図した制度ではありません。ただ、仕組みを知らずに天引き額の変化だけを見ると、「急に増えた」という印象を持ちやすいのも事実だと思います。
この仮徴収・本徴収の話は、年金の財政的な仕組みそのものとも関係しています。年金制度全体の背景を知りたい人はこちらもどうぞ。
→ 年金破綻のウソ?財政検証でわかった所得代替率61.2%の実態
年金振込通知書はここを見る

「結局、自分の場合はどうなっているのか」を知る一番確実な方法は、日本年金機構から送付される年金振込通知書を確認することです。通知書には、次のような項目が記載されています。
年金支払額
その回に支払われる年金の額面(税金・保険料が引かれる前の金額)が記載されています。
介護保険料額
その回に天引きされた介護保険料の金額が記載されています。前回と比較することで、変動があったかどうかが確認できます。
所得税額
源泉徴収された所得税の金額が記載されています。
個人住民税額
天引きされた住民税の金額が記載されています。
その他確認できる項目
国民健康保険料や後期高齢者医療保険料が天引きされている場合は、その金額も併記されます。手元に通知書がある人は、前回分と見比べながら、どの項目が変化しているかをチェックしてみると、振込額が変わった理由がかなり具体的に見えてきます。通知書が届いていない、または紛失してしまった場合は、日本年金機構やねんきんネットで再発行・確認ができます。
通知書は改定のタイミングで届く
年金振込通知書は、年金額や控除額に変更があったタイミングで送付される仕組みになっています。逆に言えば、金額に変更がない回には送られてこないこともあるため、「通知書が来ないから何かおかしいのでは」と不安になる必要は必ずしもありません。まずは前回までに届いている通知書を保管しておき、金額に変化があったときに見比べられるようにしておくと、いざというときに役立ちます。私も過去の通知書を引き出しにまとめて保管するようにしてから、金額の変化を追いやすくなったと感じています。
2026年は年金額自体は増えている

厚生労働省の発表によると、2026年度(令和8年度)の年金額は、国民年金(基礎年金)が前年度比+1.9%、厚生年金が+2.0%の増額改定となっています。
増額分を試算してみた
実際にどのくらい増えているのか、厚生労働省の一次情報をもとに試算してみました。
- 国民年金(満額):月額70,608円(前年度比 約+1,300円)
- 厚生年金の標準的なモデル世帯:月額237,279円(前年度比 約+4,495円)
数字だけ見ると、年金額自体はきちんと増えていることがわかります。ただし、ここで注意したいのが「年金額が増えた=銀行への振込額も同じ割合で増える」とは限らないという点です。増額分があっても、税金や保険料の天引き額がそれ以上に増えていれば、体感としては「増えた実感がない」「むしろ減った」と感じることがあります。私も試算しながら、「制度上は増えているのに、なぜ実感と違うのか」という点にこの記事を書くきっかけとなる引っかかりを感じました。
物価の動きも合わせて見ておきたい
年金額の改定率は、物価や賃金の変動をもとに決められています。ただし、改定率がそのまま生活の実感と一致するとは限りません。日々の買い物で感じる値上がりのペースと、年金の増額率が必ずしも同じ幅で動くわけではないためです。「増えているはずなのに楽になった感じがしない」という違和感は、こうしたズレから生まれていることも多いと考えられます。この点は年金の仕組みだけでなく、物価全体の動きと合わせて捉える必要があるテーマだと感じています。
働いている人は在職老齢年金も確認

60歳以降も厚生年金に加入しながら働いている人は、「在職老齢年金」という仕組みによって年金の一部または全部が支給停止される場合があります。2026年4月からは、この支給停止の基準額が、従来の51万円から65万円に引き上げられました(厚生労働省発表)。
基準額引き上げのポイント
難しい計算式を並べるよりも、要点だけ整理すると、給与や賞与と年金の合計が一定額(2026年4月以降は65万円)を超えると、超えた分に応じて年金の一部が支給停止される、という仕組みです。基準額が引き上げられたことで、これまで支給停止の対象だった人でも、満額に近い形で受け取れるようになったケースが増えています。
賞与の月は判定額が変わりやすい
ただし、賞与を受け取った月などは、直近1年間の賞与額の月割り分が加算されるため、月々の判定額が変動することもあります。「基準額が上がったから今月から必ず満額」とは言い切れず、賞与のタイミング次第で結果が変わることもある、という点は知っておくとよいと思います。働きながら年金を受け取っている場合は、支給停止の有無や金額も年金振込通知書で確認しておくと安心です。
前回より少なかったときの確認手順
実際に「前回より少ない」と感じたときは、次の順番で確認していくと整理しやすいです。
5ステップで整理する
- 前回と今回の振込額を比較する
- 年金振込通知書を確認する
- 控除欄(所得税・住民税・介護保険料など)を前回分と比較する
- お住まいの自治体から届いている税金・保険料の通知書を確認する
- それでも分からない場合は、年金事務所や自治体の窓口に問い合わせる
手順を踏むと不安の多くは解消する
この手順で確認していくと、「年金機構の間違いではないか」という不安の多くは、実際には控除項目の変動によるものだったと分かるケースがほとんどです。制度の仕組みを知っているだけで、通帳を見たときの受け止め方がずいぶん変わってくると思います。私自身、この手順を整理してみて、「感覚で不安になる前に、まず確認する場所を知っておく」ことの大切さを改めて感じました。
年金の受け取り方に関連して、口座周りの制度整理についてはこちらの記事も参考になります。
→ マイナンバー現金給付ニュースの正体|給付システム整備と年金口座自動登録の違いを整理
制度の背景をもう少し広く知りたい人は、こちらの記事も合わせてどうぞ。
→ 国民年金1号はパート31.9%が最多?自営業との実態を解説
よくある質問

Q. 年金が前回より少ないのはなぜですか?
年金の額面自体は変わっていなくても、天引きされる税金や社会保険料の金額が変わることで、振込額が前回と異なる場合があります。
Q. 年金から介護保険料は天引きされますか?
65歳以上の人は、原則として介護保険料が年金から天引きされます。金額は前年の所得や自治体の保険料率によって異なります。
Q. 8月になると必ず年金の手取りが減りますか?
いいえ、8月だから一律に減るとは限りません。天引き額の変動は所得や自治体の運用、個人の状況によって異なります。
Q. 年金が増額されたのに振込額が増えていないのはなぜ?
年金額自体は増額されていても、税金や保険料の天引き額がそれ以上に増えていると、振込額の増加が相殺されることがあります。
Q. 年金振込通知書はどこを見ればいい?
年金支払額、介護保険料額、所得税額、個人住民税額などの控除内訳が記載されている欄を確認してください。
Q. 働いていると年金が減ることがありますか?
はい。在職老齢年金の仕組みにより、給与や賞与と年金の合計が基準額(2026年4月以降は65万円)を超えると、超えた分に応じて年金の一部が支給停止されることがあります。
Q. 仮徴収と本徴収の違いは何ですか?
前年度の金額をもとに暫定的に天引きするのが仮徴収、その年の所得等が確定した後に金額を調整して天引きするのが本徴収です。一般的な運用の一例であり、自治体や個人の状況によって異なります。
Q. 前回より振込額が少なかったとき、まず何をすればいいですか?
前回と今回の振込額を比較し、年金振込通知書の控除欄を確認するのが最初のステップです。
Q. 住民税はどのように年金から天引きされますか?
前年の所得をもとに算定された住民税額が、年金の支払いのタイミングで特別徴収される形で天引きされます。
Q. 天引きされている項目が分からないときはどうすればいいですか?
年金振込通知書や自治体からの通知書を確認し、それでも不明な場合は年金事務所や自治体の窓口に問い合わせてください。
参考・出典
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
https://www.mhlw.go.jp/content/12502000/001639615.pdf - 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額は前年度からどのように改定されたのですか。」
https://www.nenkin.go.jp/ - 厚生労働省「在職老齢年金制度の見直しについて」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00022.html - 昭島市「年金天引き(特別徴収)の仮徴収と本徴収とはなんですか?」
https://www.city.akishima.lg.jp/ - 葛飾区「年金天引き(特別徴収)されているが、8月分の天引き額が6月より増えているのはなぜですか。」
https://www.city.katsushika.lg.jp/ - 日本年金機構「年金振込通知書が届きませんが、どうしてですか。」
https://www.nenkin.go.jp/section/faq/jukyu/uketori/tsuchisho/furikomi/sofu/mityaku.html
※本記事の情報は執筆時点のものです。内容は予告なく変更されることがあります。ご自身の控除額・保険料に関する詳細は、お住まいの自治体または年金事務所に個別にご確認ください。
