📌 この記事が30秒でわかる!3行まとめ
- 2026年11月に来日するのは《ローヌ川の星月夜》(オルセー美術館)。MoMAの有名な《星月夜》とは別の作品。
- 渦巻く空と糸杉が特徴のMoMA版は1889年、静かな川辺の夜景であるローヌ川版は1888年の制作。
- 2作品の違いを比較表で整理すると、同じ画家でもわずか1年で表現が大きく変化していることがわかる。
先に結論からお伝えします。2026年11月に東京都美術館へ来日するゴッホの《ローヌ川の星月夜》(オルセー美術館所蔵)と、多くの人が「星月夜」と聞いて思い浮かべるニューヨーク近代美術館(MoMA)所蔵の《星月夜》は、別の作品です。制作年も場所も、描かれている景色もまったく異なります。私自身、最初にこの展覧会情報を読んだとき「あの渦巻く空の絵が来るんだ」と思い込んでいたので、調べていて自分の勘違いに気づいた一人です。同じように混同しやすいポイントだと思うので、この記事で整理していきます。
なお、ゴッホは生涯に星空を描いた作品を複数残しているため、「星月夜と呼べる絵は2枚だけ」と断定するものではありません。ここでは特に混同されやすい代表的な2作品を比較します。
ゴッホの「星月夜」は2つある?
比較の中心になるのは、この2作品です。
| ローヌ川の星月夜 | 星月夜 | |
|---|---|---|
| 制作年 | 1888年 | 1889年 |
| 所蔵館 | オルセー美術館(パリ) | ニューヨーク近代美術館(MoMA) |
なぜ混同されやすいのか
どちらも「星月夜」という言葉で語られることが多いため、SNSやニュースで「ゴッホの星月夜が来日」と聞くと、多くの人がMoMA版を思い浮かべてしまいます。私も最初は完全に混同していたので、この感覚はよくわかります。
今回来日するのはローヌ川版
実際に今回日本へ来るのは、オルセー美術館が所蔵する《ローヌ川の星月夜》の方です。渦巻く空の絵ではないという点を、まず頭に入れておくと現地での見え方が変わってきます。
私たちがよく知っている「星月夜」はどっち?
渦巻く空と糸杉が目印
「星月夜」と検索して真っ先に出てくる、空が大きくうねるように渦を巻き、手前に黒い糸杉(先端がとがった細長い木)がそびえる絵——あれがMoMA所蔵の《星月夜》(1889年)です。糸杉は西洋美術ではしばしば死や永遠を象徴するモチーフとして描かれてきました。
グッズ化されているのはこちら
教科書やポスター、グッズなどで目にする機会が多いのはこちらのため、「ゴッホの星月夜=この絵」というイメージが強く定着しています。私も雑貨店で見かけるゴッホ柄のグッズは、ほぼ全部このMoMA版だったと気づきました。
「ローヌ川の星月夜」はどんな作品?

一方の《ローヌ川の星月夜》は1888年、ゴッホが南フランスのアルルに滞在していた時期に描かれました。舞台は実際に街を流れるローヌ川のほとり。画面には、川面に長く反射するガス灯の光と、静かに輝く星々が描かれています。
星空に実在する星座が描かれている
夜空をよく見ると、実在する「おおぐま座」(北斗七星を含む星座)がかなり正確な位置関係で配置されています。想像だけで星をちりばめたのではなく、実際の夜空を観察して描いた可能性がうかがえる点は、この作品ならではの特徴です。
手前には寄り添って歩く人物の姿もあり、渦巻く空とうねる糸杉が主役のMoMA版とは、画面から受ける印象がかなり違います。
2つの「星月夜」の違いを比較

初心者の方でも整理しやすいように、比較表にまとめました。
表で全体像をつかむ
| 項目 | ローヌ川の星月夜(オルセー) | 星月夜(MoMA) |
|---|---|---|
| 制作年 | 1888年 | 1889年 |
| 制作場所 | 南仏アルル | サン=レミ |
| 所蔵館 | オルセー美術館 | ニューヨーク近代美術館 |
| 描かれた対象 | 実際に見た現実の風景 | 記憶や想像を含んだ風景 |
| 空の表現 | 比較的静かで水平的 | 大きくうねる渦巻き状 |
| 地上のモチーフ | ガス灯の光、川辺を歩く人物 | 黒く尖った糸杉 |
| 制作時期のゴッホ | 南仏での制作に意欲を見せていた時期とされる | 療養施設で過ごしていた時期とされる |
| 絵から受ける印象 | 静けさ、温かみ | ダイナミックな躍動感 |
制作時期のゴッホの状況については、美術史の資料でも「南仏での新しい生活への期待」「療養中の内省的な時期」といった形で語られることが多く、この記事でも単純な決めつけは避け、資料に基づく範囲での説明にとどめます。
なぜゴッホは夜を描いた?
「夜は色彩が豊かだ」という手紙の一節
ゴッホは弟のテオに宛てた手紙の中で、「夜は昼よりも色彩が豊かだ」という趣旨のことを記しています。単に暗闇を黒で塗りつぶすのではなく、青や紫、緑といった色を重ねることで、夜という時間帯の豊かさを表現しようとしていたようです。
ガス灯と星の光の対比
《ローヌ川の星月夜》のガス灯の光と星の光が対比的に描かれているのも、この関心の延長線上にあると考えられます。人工の光と自然の光を同じ画面に並べた発想が、私にはとても現代的に感じられました。
ローヌ川の星月夜は実在する風景?
アルルのローヌ川沿いが舞台
はい、実在する風景を基に描かれたとされています。アルルの街を流れるローヌ川沿いは、当時のゴッホが好んで散策していた場所のひとつでした。
今も構図を探すファンがいる
私も資料を読みながら「本当にこの場所に立って描いたのか」と想像すると、絵の見え方が少し変わってくるように感じました。現在も現地では、絵の構図に近い視点を探すファンがいるとも言われています。
星月夜の1年前に描かれたのがローヌ川の星月夜
制作順を時系列で並べてみます。
- 1888年:《ローヌ川の星月夜》(アルル、オルセー美術館所蔵)
- 1889年:《星月夜》(サン=レミ、MoMA所蔵)
制作からの年数を計算してみた
私も実際に西暦を計算してみました。2026年を基準にすると、《ローヌ川の星月夜》は制作から138年、MoMA《星月夜》は制作から137年が経過していることになります。2作品の制作年の差はわずか1年ですが、その1年の間にゴッホの画風・関心は静かな夜景から渦巻く夜空へと大きく変化しています。数字にしてみると、たった1年でここまで表現が変わることに、あらためて驚かされます。
2026年に日本へ来るのはどっち?
来日するのはローヌ川版
2026年11月14日から東京都美術館で始まる、東京都美術館の開館100周年とオルセー美術館の開館40周年を記念した特別展で来日するのは、《ローヌ川の星月夜》です。MoMA所蔵の《星月夜》ではありませんので、「あの渦巻く絵が見られる」と思って訪れると期待と異なる可能性があります。
16年ぶりの貴重な来日
とはいえ、《ローヌ川の星月夜》自体が16年ぶりの来日となる貴重な作品ですので、実物の色彩や筆致を間近で見られる機会であることに変わりはありません。私は、渦巻く空の絵と混同していたことに気づいたぶん、逆にこちらの作品への興味が強くなりました。
2026年のオルセー展で《ローヌ川の星月夜》を見たい方は、チケットの発売日・料金・超早割について別記事で整理しています。
実際に見比べるなら、どこに注目すればいい?

「知識としては違いがわかったけれど、実際に絵の前に立ったとき、何を見ればいいの?」という疑問も出てくると思います。私なりに整理してみました。
色の重ね方を見る
ゴッホは「夜は色彩が豊かだ」と考えていたため、どちらの作品も黒一色で夜を塗りつぶしていません。《ローヌ川の星月夜》は青や紫、緑を重ねた落ち着いた色調が中心で、水面のガス灯だけがオレンジ色の強い光を放っています。MoMA版はより鮮やかな青と黄色のコントラストが目を引きます。同じ「夜を色彩で描く」という発想が、2つのまったく違う画面を生み出している点は、見比べる価値があるポイントだと思います。
筆づかいの違いを見る
ゴッホの絵の特徴のひとつに、絵の具を厚く盛り上げる筆づかい(インパスト)があります。渦巻く空を描いたMoMA版は、うねるような筆致がより強く前面に出ている印象です。一方の《ローヌ川の星月夜》は、水面の反射を表現するために縦方向の筆致が使われているとされ、比較的落ち着いた画面構成になっています。実物を間近で見られる機会があれば、この筆致の違いを確認してみるとおもしろいはずです。
星の配置を見る
《ローヌ川の星月夜》では、実在する星座がかなり正確な位置関係で描かれているとされます。一方でMoMA版の星は、渦を巻くような表現の中に組み込まれていて、実際の星空の配置とは異なる、より象徴的な描き方になっています。「観察して描いたのか、感情を優先して描いたのか」という制作姿勢の違いが、星の描き方にも表れていると考えると興味深いです。
なぜ「星月夜」という同じ呼び方で語られるのか

そもそも、なぜ制作年も場所も異なる2つの作品が、どちらも日本語で「星月夜」と呼ばれているのでしょうか。
邦題としての「星月夜」
ゴッホの原題は、《ローヌ川の星月夜》がフランス語で「Nuit étoilée sur le Rhône(ローヌ川の星降る夜)」、MoMA版が「The Starry Night(星降る夜)」に相当する英題です。どちらも「星が降るような夜」という意味合いを持つため、日本語に訳す際にどちらも「星月夜」という言葉が当てられてきました。私自身、両方の原題を並べて見たとき、「なるほど、これは訳語の時点で混同しやすい構造になっているんだ」と納得しました。
混同を防ぐための呼び分け方
記事やニュースで正確に区別したい場合は、《ローヌ川の星月夜》《星月夜(サン=レミ)》のように、地名や所蔵館を添えて呼ぶと誤解が少なくなります。この記事でも「MoMA版」「ローヌ川版」という呼び方で意識的に区別しています。
よくある質問

Q. ゴッホの星月夜は何枚あるの?
ゴッホは星空を描いた作品を複数残していますが、特に混同されやすいのは《ローヌ川の星月夜》(1888年)と《星月夜》(1889年)の2作品です。「星月夜と呼べる絵が2枚しかない」というわけではありません。
Q. 有名な渦巻く星月夜はどこの美術館にある?
ニューヨーク近代美術館(MoMA)に所蔵されています。
Q. ローヌ川の星月夜はどこの美術館にある?
パリのオルセー美術館に所蔵されています。
Q. 2作品のうち先に描かれたのはどっち?
《ローヌ川の星月夜》の方が先で、1888年の制作です。MoMA所蔵の《星月夜》は1889年の制作になります。
Q. 2026年に日本へ来るのはどちらの星月夜?
《ローヌ川の星月夜》です。オルセー美術館所蔵の作品が16年ぶりに来日します。
Q. 2つの星月夜は同じ場所を描いているの?
いいえ、異なります。《ローヌ川の星月夜》はアルルのローヌ川沿い、《星月夜》はサン=レミで見た景色が基になっているとされています。
Q. なぜ「星月夜」というタイトルの絵が複数あるの?
ゴッホが夜の風景や星空に繰り返し関心を持ち、複数の時期・場所で夜景を描いていたためです。日本語では便宜的に近いタイトルで呼ばれることがあり、混同の一因になっています。
Q. ローヌ川の星月夜には何が描かれているの?
アルルを流れるローヌ川の川面に映るガス灯の光と、実在する星座、川辺を寄り添って歩く人物の姿が描かれています。
Q. MoMAの星月夜に描かれている糸杉にはどんな意味があるの?
西洋美術において糸杉は、しばしば死や永遠を象徴するモチーフとして扱われてきました。
Q. 2つの星月夜は同じ画材・技法で描かれているの?
どちらも油彩ですが、筆づかいには違いがあるとされています。ローヌ川版は比較的落ち着いた筆致、MoMA版はうねるように盛り上がった筆致が特徴です。
Q. ゴッホはなぜ星空をたびたび描いたの?
「夜は昼よりも色彩が豊かだ」と手紙に記すなど、夜という時間帯の色彩表現に強い関心を持っていたためとされています。
まとめ

同じ「星月夜」と呼ばれていても、《ローヌ川の星月夜》と《星月夜》では制作年も場所も、描かれている景色もまったく違います。私はこの2作品を比べてみて、同じ画家がわずか1年の間に、これほど違う夜の表情を描き分けていたことに驚きました。2026年に日本で見られるのは前者ですが、その背景を知っているかどうかで、実物を前にしたときの見え方はきっと変わってくるはずです。
参考・出典
- 東京都美術館「東京都美術館開館100周年記念 オルセー美術館所蔵 いまを生きる歓び」
https://www.tobikan.jp/ - Tokyo Art Beat「東京都美術館開館100周年記念 オルセー美術館所蔵 いまを生きる歓び」
https://www.tokyoartbeat.com/ - アートペディア「【作品解説】フィンセント・ファン・ゴッホ『ローヌ川の星月夜』」
https://artpedia.asia/ - 西洋絵画美術館「ローヌ川の星月夜 ゴッホ」
https://artmuseum.jpn.org/
※本記事の情報は執筆時点(2026年8月13日)のものです。作品の制作背景に関する記述は美術史資料に基づく一般的な解釈であり、解釈が分かれる場合があります。
