MENU

少女漫画・インフィニティはなぜこの3人?24年組との関係を解説

少女漫画インフィニティの3人展資料を見比べる知的な女性

🔖 3行まとめ

  • 萩尾望都・山岸凉子は「24年組」の文脈で語られることが多いが、大和和紀は別の文脈で語られてきた作家。
  • 3人はSF・内面/心理・身体性/歴史・古典という異なる方向へ少女漫画の表現を広げたと考えられる。
  • 「なぜこの3人か」の公式な説明は確認できておらず、本記事の解釈は文化史的な見方として区別して記載。

国立新美術館で開催される「少女漫画・インフィニティ 萩尾望都×山岸凉子×大和和紀 三人展」。ニュースを見て、私が最初に思ったのは「なぜこの組み合わせなんだろう」ということだった。萩尾望都さんと山岸凉子さんは「24年組」と呼ばれる世代の中核として語られることが多いけれど、大和和紀さんはその括りとは少し違う文脈で語られてきた作家。この記事では、公式に発表されている事実と、文化史的な解釈として考えられている部分を区別しながら整理してみたい。

目次

少女漫画・インフィニティはなぜこの3人?

少女漫画インフィニティの資料を並べて考える知的な女性

公式サイトの情報によれば、本展は国立新美術館の開館20周年記念企画として、萩尾望都さん、山岸凉子さん、大和和紀さんの原画など800点超を展示するというもの。なぜこの3名が選ばれたのかについて、運営側の明確な選定理由の公式声明は現時点では確認できていない。ただし3人とも1960年代後半にデビューし、約60年にわたり第一線で描き続けてきた同世代の作家であることは事実として押さえておきたい。

以下で見ていくように、3人は表現の方向性がそれぞれ異なる。この「違い」こそが、タイトルの「インフィニティ」につながる見方だと私は考えている。

公式発表を読み直してみた

私も公式サイトや報道発表を読み直してみたけれど、「この3人だからこそ」という具体的な選定理由を運営側が言葉にしている箇所は見つけられなかった。断定は避けたいところで、確認できるのは開館20周年記念企画であること、原画など800点超を展示すること、共催・特別協力に複数の出版社が名を連ねていることの3点。ここから先の「なぜこの3人か」は、あくまで作品史を踏まえた読み解きになる。

萩尾望都・山岸凉子・大和和紀は全員「24年組」なの?

少女漫画24年組の年表を指でたどる女性

結論から言うと、いいえ。萩尾望都さんと山岸凉子さんは24年組の文脈で語られることが多い一方、大和和紀さんは活動の舞台も作風も異なる。

そもそも「花の24年組」とは

「24年組」とは、昭和24年(1949年)前後生まれの女性漫画家たちを指す通称。1960年代初頭に貸本漫画市場が衰退し、少女漫画の舞台が『週刊少女フレンド』(講談社、1962年創刊)や『週刊マーガレット』(集英社、1963年創刊)といった週刊誌へ移行していく中で、映画・文学・クラシック音楽などの教養を作品に注ぎ込み、それまでのタブーを次々と打ち破った世代とされている。

私も年表を並べてみた

3人のデビュー年や代表作の連載開始年をあらためて並べてみると、萩尾望都さんの『ポーの一族』が1972年、山岸凉子さんの『アラベスク』が1971年、大和和紀さんの『はいからさんが通る』が1975年と、いずれも1970年代前半に集中している。1年から4年ほどの幅はあるものの、同じ10年間の中で表現の方向性がまったく異なる作品が同時多発的に生まれていたことになる。この「同時期・異方向」の構図が、今回の三人展の面白さだと私は感じている。

萩尾望都と山岸凉子

萩尾望都さんと山岸凉子さんは、小学館・白泉社系の雑誌(『少女コミック』『LaLa』など)を主な舞台とし、24年組という文脈の中で語られることが多い作家。練馬区にあった萩尾さんと竹宮惠子さんの借家、通称「大泉サロン」には山岸さんも出入りしており、若い才能が刺激し合う場だったと伝えられている。SF、少年愛、心理描写といった、それまでの少女漫画にはなかったテーマを開拓した点が共通している。

大和和紀はなぜ少し違う?

一方の大和和紀さんは、講談社の『週刊少女フレンド』や『mimi』などを主戦場とし、大泉サロンのようなコミュニティの記録も一般的には語られていない。24年組という枠組みで括られることは少なく、大正ロマンや平安文学といった日本的な歴史ドラマを、より大衆的なエンターテインメントとして描き続けてきた作家という位置づけになる。

萩尾望都が少女漫画に広げた「内面とSF」の世界

萩尾望都の世界観を思わせる本を静かに読む女性

萩尾望都さんの代表作『ポーの一族』(1972年〜)は、永遠に少年の姿のまま生き続ける吸血鬼エドガーの視点を通じて、有限の命を持つ人間の愛や孤独を描いた作品。『トーマの心臓』(1974年)はドイツの寄宿学校を舞台に、少年たちの精神的な結びつきを描き、『11人いる!』(1975年)は宇宙船を舞台にした本格SFサスペンス。それまでの少女漫画が前提としていた「恋愛を通じた成長」という枠組みを大きく広げ、SFや文学性、複雑な心理描写を持ち込んだ作家だと考えられている。

代表作を読み比べてみた

私も『ポーの一族』と『11人いる!』を読み比べてみたのだけれど、テーマの重さは共通していても、密室の宇宙船を舞台にした『11人いる!』は1冊で完結する分テンポが速く、対して『ポーの一族』は長い時間軸の中でエドガーたちの孤独をじっくり描いている。同じ作家でも作品によって読後感がここまで違うのかと、あらためて驚いた。

山岸凉子が描いた「人間の業と心理」

山岸凉子作品を思わせる緊張感のある構図を見つめる女性

山岸凉子さんの『アラベスク』(1971年〜)は、ソ連のバレエ学校を舞台に、身体表現の限界と芸術への執着を精密に描いた本格バレエ漫画。1980年代の『日出処の天子』では、聖徳太子を独自の解釈で描き、当時の少女漫画界に大きな反響を呼んだとされる。極細のペンによる緊張感のある描線と、余白を活かした画面構成で、人間の深層心理や身体性を掘り下げてきた作家という評価が一般的だ。

テーマの違いを整理してみた

『アラベスク』と『日出処の天子』を並べて整理してみると、前者は身体表現の限界に挑む芸術家の物語、後者は歴史上の人物を独自の解釈で再構築した物語と、扱う題材はかなり違う。それでも、どちらの作品にも共通しているのは、登場人物の内側にある葛藤や孤独を、繊細な線で容赦なく描き切る姿勢だと感じた。

大和和紀が広げた「歴史・古典・女性の生き方」

大和和紀作品を思わせる平安装束の資料を見つめる女性

大和和紀さんの『はいからさんが通る』(1975年〜)は、大正時代を舞台に、自分の意志で職業や結婚相手を選ぶ主人公・花村紅緒の姿を描いた作品。『あさきゆめみし』(1979〜93年)は『源氏物語』を漫画化した大作で、教育現場でも古典学習の助けとして親しまれてきた。2019年にはニューヨークのメトロポリタン美術館の「源氏物語展」で、この作品のカラー原画が展示された実績もある。歴史や古典文学を、幅広い読者に届く形で再構築してきた作家と言える。

3作家の代表作を比較してみた

3人の代表作の連載開始年と主な活動誌を表に整理してみた。

作家 代表作 連載開始年 主な活動誌 24年組の文脈
萩尾望都 ポーの一族 1972年 少女コミック(小学館) 中核として語られることが多い
山岸凉子 アラベスク 1971年 少女フレンド→LaLa等 中核として語られることが多い
大和和紀 はいからさんが通る 1975年 週刊少女フレンド(講談社) 一般的には別枠で語られる

こうして並べると、活動誌の違いがそのまま表現の方向性の違いにも重なっていることが見えてくる。同じ「少女漫画」という言葉の中に、これだけ幅の広い作家性が共存していたのかと、私自身、あらためて驚いた。

「インフィニティ」というタイトルが見えてくる

展覧会の運営側が「なぜこの3人か」を詳細に説明した公式資料は、現時点では確認できていない。ただし、内面世界とSF(萩尾)、人間の業と身体性(山岸)、歴史と古典文学(大和)という、異なる3つの方向へ少女漫画の表現領域が同時期に広がっていったことは、複数の作品史・年表から読み取れる事実だ。

もし24年組の作家だけで構成した場合、展示のテーマは内省的な心理描写やSFといった特定の側面に寄る可能性がある。そこに、24年組とは異なる文脈で歴史・古典を大衆的に描いてきた大和和紀さんが加わることで、1970年代の少女漫画表現の広がりがより立体的に見えてくる——というのが、私なりに整理した「インフィニティ(無限)」というタイトルの読み解き方だ。これはあくまで文化史的な解釈であり、公式が明言した企画意図ではない点は念のため書き添えておきたい。

24年組にはほかにどんな作家がいる?

24年組という言葉が指す作家は、萩尾望都さんや山岸凉子さんのほかにも、竹宮惠子さん、大島弓子さん、池田理代子さんなど複数名が挙げられることが多い。今回の三人展が「24年組展」ではなく、あえて大和和紀さんを組み合わせた三人展として企画されている点は、24年組という枠組みそのものを主題にしていないことの表れだと私は捉えている。

なぜ今、国立新美術館で少女漫画なのか

漫画の原画は近年、文化財として保存・研究の対象として扱われる動きが進んでいる分野。前述の通り、2019年には大和和紀さんの『あさきゆめみし』の原画がメトロポリタン美術館の「源氏物語展」で展示されるなど、海外での評価が確立してきた事例もある。国立新美術館という国内屈指の展示空間で、開館20周年という節目に少女漫画を大規模に扱うことは、こうした評価の変化を映した動きの一つと考えられる。

私も海外評価の年表を整理してみた

漫画の海外評価がどう積み上がってきたか、私も分かる範囲で年表にしてみた。2019年にメトロポリタン美術館の源氏物語展で大和和紀さんの原画が展示され、2022年には萩尾望都さんが米国のアイズナー賞「コミックの殿堂」入りを果たしている。数年単位で見ても、日本の少女漫画の作家性が海外の美術・文化の文脈で評価される機会が積み重なってきていることが分かる。今回の国立新美術館での三人展も、こうした流れの延長線上にある企画だと考えられる。

賢く・美しく・暮らしを整えるアイテムたち

展覧会に出かける日は、身の回りのアイテムも少し丁寧なものを選びたくなる。長時間の外出にも合わせやすいものを整理してみた。

原画の技法にも表現の違いが表れている

3人の違いは、ストーリーやテーマだけでなく、原画そのものの描き方にも表れていると言われている。萩尾望都さんは映画的なコマ割りで心理的な時間の流れを描き、山岸凉子さんは極細のペンで緊張感のある線を、大和和紀さんは歴史考証に基づいた緻密な着物の柄などを手作業のスクリーントーンで表現してきたとされる。原画展というかたちで実物を見比べられるのは、こうした技法の違いを直接確認できる貴重な機会だと言える。

まとめ|3人だから見える少女漫画の”無限”

少女漫画・インフィニティは、萩尾望都さん、山岸凉子さん、大和和紀さんという、同世代でありながら表現の方向性が異なる3人を並べた展覧会。24年組という枠組みに全員が当てはまるわけではないという事実を押さえたうえで見ると、内面・心理・歴史という3つの異なる方向へ広がっていった少女漫画の表現史が、より立体的に見えてくると思う。会期は2027年2月8日までと長いので、気になった作品を1つでも読んでから訪れると、原画の見え方がまた変わってくるはずだ。

よくある質問

少女漫画インフィニティの3人展資料を見比べる知的な女性

Q. 少女漫画・インフィニティはなぜこの3人が選ばれたのですか?

運営側が選定理由を詳細に説明した公式資料は現時点では確認できていません。3人とも1960年代後半にデビューし、約60年にわたり第一線で活動してきた同世代の作家である点は公式情報から確認できる事実です。

Q. 萩尾望都さんと山岸凉子さんと大和和紀さんは全員「24年組」なのですか?

一般的には萩尾望都さんと山岸凉子さんが24年組の文脈で語られることが多く、大和和紀さんは別の文脈で語られることが多いとされています。

Q. そもそも「24年組」とは何ですか?

昭和24年(1949年)前後生まれの女性漫画家たちを指す通称で、1970年代に少女漫画の表現を大きく広げた世代とされています。

Q. 「大泉サロン」とは何ですか?

練馬区南大泉にあった萩尾望都さんと竹宮惠子さんの借家の通称で、山岸凉子さんらも出入りしていたとされる、当時の若手作家の交流拠点です。

Q. 3人の作風はどう違うのですか?

萩尾望都さんはSFや内面世界、山岸凉子さんは人間の業や身体性、大和和紀さんは歴史・古典文学と女性の生き方を、それぞれ描いてきたと整理できます。

Q. 「インフィニティ」というタイトルにはどんな意味がありますか?

公式による詳細な説明は確認できていませんが、異なる方向性を持つ3人の作家が並ぶことで、少女漫画という表現の広がりを示していると解釈することができます。

Q. なぜ国立新美術館という国立の美術館で少女漫画を展示するのですか?

漫画の原画が文化財として保存・研究の対象になりつつある近年の動きの一環と考えられます。2019年のメトロポリタン美術館での展示なども、その流れの一例です。

Q. 大和和紀さんの作品が海外で評価された事例はありますか?

2019年にニューヨークのメトロポリタン美術館の「源氏物語展」で、『あさきゆめみし』のカラー原画が展示されました。

Q. この記事はチケットや料金について解説していますか?

チケットや料金、アクセスなどの実用情報は扱っていません。来場を計画されている方は、姉妹サイトのチケット解説記事もあわせてご覧ください。

Q. 24年組にはほかにどんな作家がいますか?

竹宮惠子さん、大島弓子さん、池田理代子さんなどが挙げられることが多いですが、本展の対象ではないため詳細は割愛します。

参考・出典

  • 国立新美術館「少女漫画・インフィニティ 萩尾望都×山岸凉子×大和和紀 三人展」公式サイト
    https://nact.jp/
  • Wikipedia「24年組」
  • Wikipedia「大泉サロン」
  • CREA「萩尾望都、山岸凉子ら花の24年組に『少女マンガ』のバトンを繋いだ。83歳の巨匠が語る少女マンガ黎明期」
  • コミックナタリー「大和和紀『あさきゆめみし』カラー原画がメトロポリタン美術館の『源氏物語展』に」
  • Tokyo Art Beat「萩尾望都×山岸凉子×大和和紀の3人展が国立新美術館で2026年に開催」

※本記事のうち「なぜこの3人か」に関する解釈部分は、公式発表と区別した文化史的な見方として記載しています。内容は執筆時点(2026年8月)のものです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次