この記事の3行まとめ
- 台風15号が東から西へ「逆走」するのは、太平洋高気圧の張り出しと寒冷渦との「藤原の効果」が原因。
- 気象庁の正式表現は「複雑な動きをする台風」。2018年台風12号など過去にも同様の事例がある。
- 中心気圧985hPaでも、地形性降雨やフェーン現象により数字以上の危険性がある仕組みを整理しました。
2026年8月11日、台風15号が関東の東海上から西へ向かって進むという、普段とは逆の経路をたどっている。私はこのニュースを見て「なんで東から来るの?」と単純に不思議に思い、実際に気象の仕組みを調べてみた。結論から言うと、これは太平洋高気圧の異常な張り出しと、南海上の寒冷渦との相互作用が組み合わさって生まれる、れっきとした気象学的な現象だった。この記事では「逆走台風」がなぜ起きるのか、そして勢力の数字だけでは測れない危険性がどこにあるのかを、過去の事例や独自の試算も交えて整理していく。
そもそも台風はなぜ西から東へ進むのが普通なのか

日本に接近する台風の多くは、南の海上で発生したあと、太平洋高気圧の縁に沿うように北上し、上空を吹く偏西風に乗って西から東へ足早に駆け抜けていく。これが私たちが普段ニュースで見慣れている「南から来て東へ抜ける」動きの正体だ。私は最初、台風の進路なんてある程度ランダムなものだと思っていたのだが、調べてみると実は非常に規則的な力学で説明できることに驚いた。
偏西風という「ベルトコンベア」の役割
偏西風は地球規模で常に西から東へ吹いている強い風の帯で、上空約5,000〜1万メートル付近を流れている。台風はこの流れに乗ると一気にスピードを上げて日本列島を通過していく。いわば台風にとっての「ベルトコンベア」のような存在で、秋になるほど偏西風が南下してくるため、台風の速度が速くなる傾向がある。
太平洋高気圧が進路のレールを作る
太平洋高気圧は夏場に日本の南海上で勢力を強め、台風がその縁をなぞるように北上するレールの役割を果たしている。台風は高気圧の中には入り込めないため、高気圧の外周を沿うように進む性質がある。この2つ、つまり偏西風というベルトコンベアと太平洋高気圧というレールが揃って初めて、私たちが慣れ親しんだ「南から来て東へ抜ける」進路が完成する。
台風15号が逆走している本当の理由

今回の台風15号は、この「いつものレール」が使えない状態になっている。私はここが一番の疑問だったので、順を追って整理してみた。
太平洋高気圧が「壁」になっている
通常なら台風の北上を助けるはずの太平洋高気圧が、今回は日本の北から東側にかけて異常に強く張り出しており、台風が北上・東進しようとする進路をふさぐ「壁」のような存在になっている。行き場を失った台風は、通常とは違う動きを取らざるを得なくなる。私が驚いたのは、高気圧の位置がほんの少しズレるだけで、台風の進路がここまで劇的に変わってしまうという事実だった。
藤原の効果で寒冷渦に巻き込まれる
さらに本州の南海上には、中心に冷たい空気を持つ「寒冷渦(寒冷低気圧)」が存在している。暖かい渦である台風と、冷たい渦である寒冷渦が近づくと、互いの周囲を反時計回りに回り合う「藤原の効果」という現象が起きる。壁に阻まれた台風が、この寒冷渦の周りを回る気流に引きずられる形で、東から西へと押し流されるように進んでいるというわけだ。藤原の効果という名前自体、1921年に気象学者・藤原咲平が発見したことに由来していて、100年以上前から知られている現象が今も台風予報を悩ませているというのも興味深い。
4段階で整理する逆走のプロセス
試しにこの仕組みを図式的に整理してみると、①太平洋高気圧が北・東を塞ぐ→②行き場のない台風が南の寒冷渦に接近→③藤原の効果で反時計回りの相互作用が発生→④台風が西向きの流れに巻き込まれる、という4段階のプロセスで説明できる。単一の原因ではなく、複数の気象要素が同時に噛み合って初めて起きる、かなり特殊な条件がそろった結果と言える。
「逆走台風」は正式な気象用語ではない
ちなみに「逆走台風」「迷走台風」という言葉はメディアが使うキャッチーな表現であり、気象庁の公式な予報用語としては採用されていない。気象庁は「台風が自ら迷走しているわけではない」という理由から、正式には「複雑な動きをする台風」という表現を用いている。私はこの違いを知って、ニュースの見出しに使われる言葉と、気象庁が発表する一次情報の言葉づかいが違うことに改めて気づかされた。この違いを知っておくと、報道の見出しに過度に振り回されずに済む。
過去にも逆走した台風はあったのか比較してみた

今回のような複雑な動きをする台風は、実は過去にも例がある。
2018年台風12号(ジョンダリ)との比較
2018年の台風12号は、関東の南の海上を西に進み、三重県に上陸したあと近畿・中国・九州と西日本を完全に「逆走」する進路をとった。この時も、太平洋高気圧の張り出しと寒冷渦との相互作用が原因だったとされている。今回の台風15号と発生メカニズムが共通している点は興味深い。
2016年台風10号(ライオンロック)との違い
2016年の台風10号は、日本の南海上を迷走したあとに北上し、統計史上初めて東北地方太平洋側(岩手県)に直接上陸し、大雨による甚大な被害をもたらした。今回の台風15号も東北太平洋側への影響が懸念されている点は共通するが、進路のたどり方は完全に一致するわけではなく、その年ごとの高気圧・寒冷渦の位置関係によって毎回パターンが変わる。
過去の逆走台風について詳しく整理した記事は台風9号バービーは最大級の猛烈台風|沖縄接近だけじゃない、全国の物流・猛暑リスクを整理でも扱っているので、あわせて読んでみてほしい。
中心気圧985hPaなのに危険と言われる理由

「985hPaなら猛烈な台風じゃないから大丈夫では」と思う人もいるかもしれない。私も最初はそう思っていたが、調べてみると気圧の数字だけで安全を判断するのは危険だとわかった。
地形性降雨という盲点
通常、日本の天候は西から東へ変化するため、山脈の西側に雨が降りやすい。しかし今回は東から西へ風が吹き付けるため、海からの暖かく湿った強風が奥羽山脈や阿武隈高地、関東の山地に東側から直接ぶつかることになる。風が山を駆け上がる斜面、つまり普段は雨が少ない太平洋側の地域で乱層雲が急速に発達し、川の許容流量を超える猛烈な大雨となる危険性がある。これが「地形性降雨」と呼ばれるメカニズムだ。
フェーン現象による通過後の酷暑リスク
台風が日本海側へ抜ける際には、湿った空気が山を越えて雨を降らせたあと、乾いた熱風となって山の風下側(新潟・北陸地方など)へ吹き下ろす「フェーン現象」が発生する。空気が山を下る過程で圧縮されて気温が急上昇するため、台風通過後に季節外れの酷暑(40℃近く)をもたらすことがある。停電でエアコンが使えない状態でこの現象が重なると、屋内にいても命に関わる熱中症リスクにさらされる。
気圧だけを見て安全を判断してはいけない理由
私が調べていて特に印象に残ったのは、気象の専門家が「気圧よりも進路と地形の組み合わせを見るべき」と繰り返し指摘している点だった。同じ985hPaの台風でも、まっすぐ南から北上してくる場合と、今回のように東から西へ横切ってくる場合とでは、危険にさらされる地域も雨量も全く違ってくる。数字の大小だけで「大したことない」と判断せず、進路図と地形をあわせて見ることが大切だと感じた。
独自試算:地形性降雨で雨量がどれくらい変わるのか計算してみた

実際に雨量の増加率を計算してみた
平年、東北太平洋側の8月の月間降水量はおおよそ150mm前後とされることが多い地域だが、今回のような地形性降雨が強く働くケースでは、数時間で50〜100mmクラスの雨が局地的に降ることが想定される。仮に6時間で80mmの雨が降ったと仮定すると、1時間あたり約13.3mm(80÷6=13.3)というペースになり、これは平年の月間降水量の半分以上を数時間で消化してしまう計算になる。さらに、平年の8月降水量150mmに対して1回の台風で80mm降ると仮定すると、その台風だけで月間降水量の約53%(80÷150×100=53.3)を占めることになる。私は実際に電卓を叩いてみて、山を駆け上がる風がもたらす雨量のインパクトがどれだけ大きいか、数字で見て初めて実感できた。
フェーン現象による気温上昇を試算してみた
フェーン現象では、湿った空気が100メートル上昇するごとに約0.5℃下がり、山を越えて乾いた空気として下降する際は100メートルごとに約1.0℃上がるとされる。仮に標高1,500メートルの山を越えるケースで計算すると、上昇時の気温低下は1,500÷100×0.5=7.5℃、下降時の気温上昇は1,500÷100×1.0=15℃となり、単純計算では下降後の気温が上昇前より7.5℃(15−7.5)も高くなる計算になる。平年の最高気温が32℃だとすれば、フェーン現象が重なると理論上39.5℃前後まで跳ね上がる可能性がある試算結果になった。もちろん実際の気象条件は複雑に絡み合うため単純計算通りにはいかないが、フェーン現象がもたらす気温上昇のインパクトの大きさを掴む目安にはなる。
逆走台風から身を守るための備えの整理
仕組みが分かったところで、実際の備えについても整理しておきたい。
ハザードマップで確認しておきたいこと
地形性降雨の影響を受けやすい地域では、普段台風の直撃に慣れていない分、川の増水や土砂災害への警戒が手薄になりがちだ。私も今回改めて自宅周辺のハザードマップを見直してみたのだが、土砂災害警戒区域や浸水想定区域が思っていたより自宅に近い場所まで広がっていて驚いた。台風が来る前の平常時にこそ、一度目を通しておく価値がある。
停電・断水への備えを整理してみた
停電・断水に備えてモバイルバッテリーや生活用水を用意しておくことが、地域を問わず共通して有効な対策だと言える。私の場合、モバイルバッテリー1個(10,000mAh)でスマホを約2〜3回フル充電できる計算になるので、家族分を考えると2〜3個は用意しておきたいところだと試算した。浴槽の水は満水でおよそ200リットル前後にもなり、トイレを流す生活用水としては数日分の備えになる。
まとめ:複雑な動きをする台風とどう向き合うか
台風15号の逆走ルートは、太平洋高気圧の異常な張り出しと寒冷渦との藤原の効果という、複数の気象要素が重なって生まれた特殊な現象だった。気圧の数字だけを見て「弱いから大丈夫」と判断するのではなく、地形性降雨やフェーン現象といった、進路の特殊性に由来するリスクにも目を向けることが重要だ。私自身、今回調べてみて「同じ台風でも進路次第でリスクの中身がまったく変わる」ということを改めて実感した。今後も似たような逆走台風が発生する可能性はあるため、進路図だけでなく地形との関係性まで含めて理解しておくことが、正しい備えの第一歩になると思う。
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よくある質問
Q. なぜ台風は普通、西から東へ進むのですか?
太平洋高気圧の縁に沿って北上し、上空の偏西風に乗ることで西から東へ進むのが一般的な経路です。
Q. 台風15号はなぜ東から西へ逆走しているのですか?
太平洋高気圧が北・東側に異常に強く張り出して壁となり、南海上の寒冷渦との「藤原の効果」によって反時計回りの流れに巻き込まれているためです。
Q. 「逆走台風」は気象庁の正式な用語ですか?
いいえ、正式な予報用語ではありません。気象庁は「複雑な動きをする台風」という表現を用いています。
Q. 過去にも同じような逆走台風はありましたか?
2018年の台風12号(ジョンダリ)が代表例で、太平洋高気圧と寒冷渦の相互作用によって西日本を逆走する進路をとりました。
Q. 藤原の効果とは何ですか?
2つの渦(低気圧や台風)が近づいたときに、互いの周囲を回り合うように動く現象のことです。1921年に気象学者・藤原咲平が発見しました。
Q. 中心気圧985hPaは弱い台風なのですか?
数値だけでは弱く見えますが、地形性降雨などの要因で気圧の数字以上の大雨リスクがあるため、油断はできません。
Q. 地形性降雨とはどのような現象ですか?
風が山にぶつかって上昇することで雲が急速に発達し、局地的に激しい雨が降る現象です。
Q. フェーン現象はなぜ台風通過後に猛暑をもたらすのですか?
山を越えた乾いた空気が圧縮されながら吹き下ろすことで気温が急上昇するためです。
Q. 東から風が吹くと、普段と何が違うのですか?
普段は雨が少ない太平洋側の斜面に直接強い風がぶつかるため、経験の少ない地域で大雨や土砂災害のリスクが高まります。
Q. 逆走台風の進路予測はなぜ難しいのですか?
高気圧と寒冷渦の位置関係で進路が大きく変わるため、通常の台風より予測の不確実性が高くなる傾向があります。
賢く・美しく・暮らしを整えるアイテムたち
ビサイユのトートバッグ
不安定な天候が続く時期こそ、日々の持ち物は機能性で選びたい。ビサイユのトートバッグは超軽量・撥水加工・スキミング防止ポケット付きで、天候に左右されず暮らしを整えてくれる一品だ。
一粒ルビーネックレス
複雑な動きをする台風のように、先が読みにくい世の中だからこそ、お守りのように身に付けたいアクセサリーがあると心強い。英国製・18Kゴールドプレーティング×シルバー925の一粒ルビーネックレスは長く愛用できる一品だ。
軽量ショルダーBCS-140
防災グッズで荷物が増える日も、身軽さは失いたくない。撥水加工・スキミング防止・多収納で使いやすい軽量ショルダーBCS-140は、備えと身軽さを両立してくれる一品だ。
参考・出典
- 気象庁「台風はなぜ南からやってくるのですか?」
https://www.jma.go.jp/ - JAMSTEC BASE「なぜ台風12号はかつてないルートで日本を襲ったのか?」
https://www.jamstec.go.jp/ - ウェザーニュース「平成史 台風⑨ 平成30年台風12号 逆走台風 東から西へ日本列島を縦断」
https://weathernews.jp/s/topics/ - 日本気象協会 tenki.jp「要注意!荒天をもたらす『寒冷渦』とは?」
https://tenki.jp/ - 東京大学 海洋アライアンス「フェーン現象の『常識』は常識ではなかった」
https://www.oa.u-tokyo.ac.jp/
※本記事は執筆時点(2026年8月11日)の情報に基づく気象メカニズムの解説であり、最新の進路情報は気象庁の公式発表をご確認ください。
