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無期転換したのに給料が上がらない?「タダ無期」と正社員との待遇差を解説

無期転換したのに給料が上がらないタダ無期問題を資料で確認する様子

📌 この記事が30秒でわかる!3行まとめ

  • 無期転換は契約期間が有期から無期になる制度で、正社員への転換制度ではありません
  • 給料・賞与・手当が有期時代のまま変わらない状態は「タダ無期」と呼ばれています
  • 2026年10月改正で、事業主に無期転換後の待遇点検・是正が雇用管理指針上求められます

有期契約で5年以上働き続け、ようやく無期契約に転換できた。それなのに、給料もボーナスも手当も、有期時代とまったく変わらない——。こうした状態は、俗に「タダ無期」と呼ばれ、働く人の間で静かに広がっている疑問です。私自身、この言葉を初めて知ったとき、「無期転換したのに何も変わらないなんて、そんなことがあるの?」と正直驚きました。

この記事では、「無期転換したのに正社員との待遇差がそのままなのはおかしくないか」という疑問について、2026年10月に施行が予定されている改正の内容も含めて、できるだけ丁寧に整理していきます。

目次

無期転換しても給料が上がるとは限らない

無期転換制度そのものの意味

まず押さえておきたいのが、無期転換制度そのものの意味です。無期転換とは、有期労働契約で通算5年を超えて働いた労働者が申し出ることで、契約期間の定めがない「無期労働契約」に切り替わる制度のことを指します。労働契約法に基づくこの制度は、あくまで「契約期間」が有期から無期になる仕組みであり、正社員への転換を意味するものではありません

待遇はそのまま引き継がれるのが実態

つまり、無期転換した後も、給料や賞与、昇給、退職金、各種手当といった労働条件は、基本的にはそれまでの有期契約時代の内容が引き継がれます。契約更新のたびに雇止めの不安を抱える必要はなくなりますが、待遇そのものが自動的に良くなるわけではない、というのがこの制度の実態です。私は「無期転換=正社員と同じような扱いになる」というイメージを最初持っていましたが、調べていく中で、法律上はあくまで「雇用契約の期間」に関するルールであって、賃金制度とは別のレイヤーの話だと分かりました。この2つを混同している人は、実際に多いのではないかと感じています。

「タダ無期」とは?

タダ無期という言葉が書かれた資料を読み込む様子

契約期間だけが無期になる状態

「タダ無期」という言葉は、契約期間だけが無期になり、給料・賞与・昇給・退職金・各種手当などの労働条件が、有期契約社員時代とほとんど変わらない状態を指す俗称です。ここで注意しておきたいのは、「タダ無期」は法律で定義された公的な用語ではなく、労働者やメディアの間で使われるようになった通称であるという点です。

制度上の「意味」と労働者の「実感」のズレ

制度上は「無期転換した」という事実自体に意味がありますが、労働者側の実感としては「契約が切られる不安だけがなくなって、給料も手当も何も変わらない」という状態になりやすく、この落差が「タダ無期」という表現に表れていると考えられます。

なぜ無期転換社員は制度の「隙間」に入りやすい?

パートタイム有期雇用労働法の適用範囲を図で整理する様子

ここが、この記事で一番整理しておきたいポイントです。

法律が想定する保護対象からのズレ

日本の労働法には、非正規雇用労働者の待遇を守るための「パートタイム・有期雇用労働法」という法律があります。この法律は、その名の通り「パートタイム労働者」と「有期雇用労働者」を主な保護対象としています。ところが、フルタイムで働く無期転換社員の場合を考えてみましょう。契約期間はすでに「無期」になっているため「有期雇用労働者」には当てはまらず、所定労働時間が正社員と同じフルタイムであるため「短時間労働者(パートタイム労働者)」にも当てはまりません。このため、フルタイムの無期転換社員は、パートタイム・有期雇用労働法が直接想定している保護の対象から外れてしまう、という法律上のねじれが生じます。

争う際の根拠が難しくなる

有期でもない、パートでもない、けれど正社員でもない——この立ち位置が、「制度の隙間」と呼ばれる状態です。この隙間に置かれた労働者が正社員との待遇差を争おうとする場合、パートタイム・有期雇用労働法を直接の根拠にすることが難しく、労働契約法の趣旨や民法上の公序良俗、あるいは不法行為の考え方など、より一般的な法律構成に頼らざるを得ない場面があります。制度が想定していなかった立場に置かれることで、待遇改善を求める際のハードルが上がりやすい、というのがこの問題の構造です。

正社員と同じ仕事なのに給料が違ってもいい?

正社員と無期転換社員の業務内容を比較して確認する様子

無期転換社員が正社員とほぼ同じ業務をしているケースは少なくありません。では、業務内容が同じなら給料も同じになるべきなのでしょうか。

判断に使われる複数の要素

一般的な同一労働同一賃金の考え方では、待遇差の合理性は業務内容だけで判断されるものではなく、職務内容(業務と責任の程度)、転勤の可能性、部署をまたぐ配置転換の範囲、昇進の可能性、人材活用の仕組み全体としての違いなど、複数の要素を総合的に比較して判断されます。

「仕組みの違い」が形だけになっていないか

たとえば、正社員には将来的な転勤や部署異動、昇進の可能性が用意されている一方で、無期転換社員にはそうした人材活用の仕組みが一切用意されていない、という場合、この違いを理由に待遇差が説明されることがあります。逆に言えば、実態としてこうした違いがほとんど存在しない、あるいは形だけのものになっている場合には、待遇差の合理性が疑問視される可能性が出てきます。私も、この「仕組みが形だけになっていないか」という視点を知るまでは、業務内容さえ同じなら待遇差は単純に不合理だと思い込んでいました。しかし実際には、目に見えない人材活用の仕組みまで含めて比較する必要があると分かり、考え方を改めました。

2026年10月改正で無期転換社員はどう変わる?

2026年10月施行予定の改正内容を確認する様子

2026年10月1日に施行が予定されている改正では、この「無期転換社員の制度の隙間」問題にも一定の対応が盛り込まれています。

変わること

事業主が講ずべき雇用管理指針に新しい項目が設けられ、有期雇用から無期雇用に転換した労働者について、正社員などの通常の労働者との間に不合理な待遇差が存在しないかを事業主が点検し、必要に応じて是正することが求められるようになります。

変わらないこと

ここで誤解しないでいただきたいのは、「2026年10月から無期転換社員にも正社員と同じ給料の支払いが義務化される」というわけではない、ということです。無期転換したこと自体によって、給料や賞与が自動的に正社員水準に引き上げられるという法的な仕組みにはなっていません。あくまで「点検・是正の努力」を促す性質の改正であり、待遇差そのものを直接禁止する新しい罰則規定が設けられるわけではありません。とはいえ、これまで法律上のグレーゾーンとして放置されがちだった無期転換社員の待遇について、事業主側に点検の視点を持たせる改正であることは、労働者にとって一定の意味を持つ変化だと言えます。

こんなケースなら待遇差を確認してみてもいい

自分の勤続年数と待遇を照らし合わせてメモをとる様子

無期転換後の待遇差について、「会社に確認してみる余地があるかもしれない」と考えられる具体例をいくつか挙げてみます。あくまで「違法確定」という意味ではなく、確認する価値があるケースとして参考にしてください。

これらの具体例に共通しているのは、「正社員に用意されているはずの人材活用の仕組み(転勤・異動・昇進)が、実際には機能していないのに、待遇だけが有期時代のまま据え置かれている」という構図です。制度上の建前と現場の実態がずれているケースほど、待遇差の説明を求める意味があると考えられます。

該当しやすい5つの具体例

  • 10年以上、同じ会社で継続して働いている
  • 正社員とほぼ同じ内容の業務を担当している
  • 新卒で入社した正社員に、自分が業務を教える立場になっている
  • 比較対象となる正社員にも、実際には転勤や大きな部署異動がほとんどない
  • 自分だけボーナスや各種手当が一切支給されていない

これらに当てはまるからといって、必ず待遇差が違法と判断されるわけではありません。しかし、「正社員側の人材活用の仕組みが形だけのものになっていないか」「自分の業務内容と正社員の業務内容にどれだけの違いが実際にあるか」を、一度冷静に見直してみる価値はあると考えられます。

勤続年数と待遇差を試算してみた

ここで、仮のケースを使って独自に試算してみました。無期転換社員として時給1,300円・フルタイム(1日8時間・月20日勤務)で働いている場合、月収は「1,300円×8時間×20日=208,000円」です。年収に換算すると「208,000円×12か月=2,496,000円」になります。もし同じ業務内容の正社員に、賞与として基本給の2か月分(仮に月収換算で208,000円×2=416,000円)が年間で支給されているとすると、無期転換社員との年収差は単純計算で「416,000円」にのぼります。これはあくまで仮の数字による試算ですが、「賞与の有無」だけで年収に40万円以上の差が生まれうるという事実は、無期転換社員が置かれている状況の厳しさを数字で表していると感じます。私自身、この計算をしてみるまでは「手当や賞与の差」を漠然としたイメージでしか捉えていませんでした。しかし実際に数字を並べてみると、想像以上に大きな金額差になることに気づき、この問題が単なる感情論ではなく、生活に直結する具体的な差であることを改めて実感しました。

会社に何を確認すればいい?

待遇差について会社に確認する際、感覚的に訴えるのではなく、客観的な資料をもとに整理しておくことをおすすめします。

準備しておきたい資料

労働条件通知書(契約時に渡された労働条件の記載内容)、雇用契約書(無期転換後の現在の契約内容)、就業規則(会社全体のルールが記載されており、労働者がいつでも閲覧できる場所に備え付けられているはずです)、賃金規程(給与・賞与・手当の支給基準)の4点が基本になります。

確認しておきたい比較のポイント

そのうえで、正社員との職務内容の違い(日々の業務、責任の範囲、トラブル対応の有無など)、配置転換の違い(転勤や部署異動が実際にどの程度行われているか)、各手当の支給目的(生活保障なのか、異動への補填なのかなど)を整理し、会社の担当窓口に対して待遇の相違の内容や理由について確認を求める、という流れが現実的な進め方になります。

納得できないときの相談先

会社に確認しても納得のいく説明が得られない場合、外部の相談窓口を利用する方法があります。

総合労働相談コーナーという選択肢

こうした相談を受け付けている窓口のひとつが、各労働局が設けている「総合労働相談コーナー」です。残業代の未払いなど、労働基準法への明確な違反を取り締まる労働基準監督署とは扱う内容が異なり、待遇差の「不合理性」のように民事的な判断が絡む相談は、こちらの窓口の担当分野になります。専門の相談員による無料相談を、全国各地で受けられる体制が整っています。

あっせん制度という解決手段

相談だけで解決しない場合には、第三者機関である紛争調整委員会による「あっせん」という制度もあります。裁判という大掛かりな手続きを取らずに、会社側との話し合いの場を設けてもらえる仕組みで、時間や費用の負担を抑えながら解決を目指せる方法のひとつです。まずはお住まいの地域を管轄する労働局に、どのような対応が可能か確認してみるとよいでしょう。

まとめ

無期転換は「正社員になること」を意味する制度ではなく、また「無期転換すれば自動的に待遇が改善される」という制度でもありません。この2つの誤解を切り離して理解しておくことが、まず出発点になります。

一方で、長年にわたって同じ会社で正社員とほぼ変わらない仕事を続けているにもかかわらず、待遇差の理由がはっきり説明できないという状態が続いているのであれば、その理由をあらためて確認してみる価値はあると私は考えます。2026年10月の改正によって、事業主側にも無期転換後の待遇を点検する視点が求められるようになる以上、労働者側から声を上げやすい環境が、少しずつ整いつつあるとも言えるのではないでしょうか。

よくある質問

無期転換したのに給料が上がらないタダ無期問題を資料で確認する様子

Q. 無期転換とはどのような制度ですか?

有期労働契約で通算5年を超えて働いた労働者が申し出ることで、契約期間の定めがない無期労働契約に切り替わる制度です。労働契約法に基づくもので、正社員への転換制度ではありません。

Q. 「タダ無期」とはどういう意味ですか?

契約期間だけが無期に切り替わり、給料・賞与・昇給・退職金・手当などの労働条件が有期契約時代とほとんど変わらない状態を指す俗称です。法律上の正式な用語ではありません。

Q. なぜ無期転換社員は法律の保護対象から外れやすいのですか?

パートタイム・有期雇用労働法は主に「パートタイム労働者」と「有期雇用労働者」を対象としています。フルタイムで働く無期転換社員は、有期でもパートでもないため、この法律が直接想定する保護対象から外れやすい構造になっています。

Q. 2026年10月の改正で無期転換社員の給料は自動的に上がりますか?

自動的に上がる仕組みにはなっていません。改正では、事業主に対して無期転換後の待遇を点検し、不合理な差があれば是正を検討することが雇用管理指針上求められるようになります。

Q. 無期転換後の待遇に納得できない場合、どこに相談すればいいですか?

各労働局が設けている総合労働相談コーナーが相談先のひとつです。労働基準監督署とは扱う分野が異なり、待遇差のような民事的な内容はこちらが担当しています。無料相談に加え、紛争調整委員会によるあっせん制度も利用できます。

Q. 無期転換社員でも正社員と待遇差があること自体は違法ですか?

違法とは限りません。職務内容、責任の程度、転勤や配置転換の範囲、昇進の可能性といった人材活用の仕組み全体の違いが合理的な理由として認められる場合、待遇差自体は認められることがあります。

Q. 無期転換の申し出をしないとどうなりますか?

無期転換権は労働者側の申し出によって発生する権利です。申し出なければ有期契約が継続することになりますが、詳細な取り扱いは会社の制度や契約内容によって異なるため、就業規則で確認することをおすすめします。

Q. 会社に待遇差を確認する際、何を準備すればいいですか?

労働条件通知書、雇用契約書、就業規則、賃金規程に加えて、正社員との職務内容や配置転換の違い、各手当の支給目的を整理しておくと、客観的な確認がしやすくなります。

Q. パート有期法と労働契約法はどう違うのですか?

パート有期法は主にパートタイム労働者と有期雇用労働者の待遇差を対象とするのに対し、労働契約法は無期転換のルールなど雇用契約全般の基本的な枠組みを定めています。フルタイムの無期転換社員は、この2つの法律の間の位置づけが曖昧になりやすい立場にあります。

Q. 無期転換後に正社員登用を目指すことはできますか?

本記事のリサーチ範囲では、無期転換社員から正社員への登用制度の有無や条件についての詳細までは確認できていません。制度の有無は会社ごとに異なるため、就業規則や人事担当者への確認が必要です。

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参考・出典

  • 厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/roudou/doitsuroudou/index.html
  • 厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン」
    https://www.mhlw.go.jp/content/000463433.pdf
  • 厚生労働省「2026年10月からパートタイム・有期雇用のルールが変わります」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00000.html
  • 厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります」
  • 厚生労働省「無期転換ルールに関する論点について」
  • 最高裁判所判例(日本郵便事件、ハマキョウレックス事件、大阪医科薬科大学事件、メトロコマース事件)
  • 広島高等裁判所判決(済生会事件・令和5年12月22日)

※本記事の情報は執筆時点(2026年8月13日)のものです。2026年10月1日の施行内容は予告なく変更される場合があります。個別の判断が必要な場合は、専門家(社会保険労務士・弁護士等)や労働局にご相談ください。

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