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傷病手当金はいつまでもらえる?支給期間・条件・申請方法を解説

傷病手当金 給与の3分の2 仕組みを整理して資料を見つめる女性

この記事の3行まとめ

①支給額は標準報酬月額の2/3だが、社会保険料・住民税を引いた実質手取りで判断する必要がある

②2022年の法改正で「通算1年6か月」に変更され、復職を挟んでも柔軟に枠を使えるようになった

③退職日の出勤・加入期間不足・社会的治癒の判定など、構造的な落とし穴を理解しておくことが重要

「傷病手当金は給与の3分の2が出る」——よく言われるこの説明、確かに間違いではありませんが、これだけを聞いて安心するのは少し早計です。実際に手元に残る金額は、社会保険料や住民税の負担を差し引いた後の「実質手取り」で考える必要があります。

本記事では、傷病手当金という制度の構造を、計算方法・統計データ・2022年の法改正の背景まで含めて整理し、自分の状況に当てはめて判断できるようにまとめます。

目次

傷病手当金とは何か——制度の位置づけ

傷病手当金 制度の位置づけ 歴史を調べる女性

1922年制定の歴史ある所得保障制度

傷病手当金は、健康保険(協会けんぽ、健康保険組合など)に加入する被用者が、業務外の病気・ケガで療養のために働けず、給与の支払いを受けられない場合に支給される所得保障制度です。1922年(大正11年)の健康保険法制定時に導入され、1927年に完全実施された歴史ある制度で、国民健康保険には原則この制度がありません。

支給を受けるための条件は、次の4つです。

受給の4条件

  1. 業務外の事由による療養であること(業務上・通勤中の災害は労災保険の管轄)
  2. 仕事に就くことができない状態(労務不能)であること
  3. 連続する3日間を含み4日以上休んでいること(最初の3日間が「待期期間」)
  4. 休業期間中に給与の支払いがないこと

待期期間には有給休暇や公休を充てることも可能です。給与が一部支払われている場合でも、その額が傷病手当金の日額を下回れば、差額が支給される仕組みになっています。

「給与の3分の2」の正確な計算式

PIC2|傷病手当金 計算式 標準報酬月額を整理する女性

1日あたりの支給額は、以下の式で算出されます。

支給額の算出式

支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額の平均額 ÷ 30日 × 2/3

社会保険料・住民税控除後の実質手取り試算

ここで重要なのは、休業中であっても健康保険料・厚生年金保険料の本人負担分、および住民税の支払い義務は継続するという点です。以下は標準報酬月額と1年6か月の全期間で受け取れる総支給額(社保控除前・後)の試算です。

標準報酬月額(年収目安)傷病手当金(月額)通算1年6か月の総支給額社保差引後の実質総額(目安)
20万(年収240万)月額133,320円総額約240万円控除後約189万円
30万円(約360万円)200,010円約3,600,000円約2,836,380円
40万円(約480万字)266,670円約4,800,000円約3,781,980円
50万円(約600万円)333,330円約6,000,000円約4,727,460円
60万円(約720万円)399,990円約7,200,000円約5,672,700円

※協会けんぽ東京支部の概算(月額社会保険料・住民税を月額控除で計算)。住民税は前年所得に基づく別途計算が必要です。

住民税の徴収猶予・減免という選択肢

休業中の社会保険料負担が厳しい場合は、自治体への申請によって住民税の徴収猶予・減免が認められるケースもあります。確定申告で還付を受けられる可能性も含め、自身の納税状況を一度整理しておくとよいでしょう。

2022年法改正の背景——なぜ「通算」になったのか

PIC4|2022年法改正 通算制度の背景を資料で確認する女性

「最長」から「通算」への転換の意味

2022年(令和4年)1月1日、健康保険法等の一部改正により、傷病手当金の支給期間は「支給開始日から最長1年6か月」から「支給開始日から通算して1年6か月」へと変更されました。従来の制度では、復職して受給していない期間も含めて1年6か月が経過すると受給権が消滅していましたが、通算化によって、再発と復職を繰り返すケースでも柔軟に所得保障を受けられるようになりました。

精神疾患の受給割合が1995年比で約9倍に

この改正が急務とされた最大の理由は、精神疾患による休職者の増加です。協会けんぽの調査では、1995年に4.45%だった「精神及び行動の障害」による受給割合は、近年約39.15%にまで上昇し、全傷病の中で最多となっています。令和6年度の統計では、男女比はほぼ半々(男性50.61%、女性49.37%)で、休職理由は1位が精神及び行動の障害、2位が新生物(がん、14.49%)、3位が筋骨格系疾患(8.76%)です。全体の平均支給日数は32.44日ですが、精神疾患関連は218.55日と大幅に長期化している点も特徴的です。

標準報酬月額28万円のケースで支給額を試算してみた

計算式を見ただけでは実感がわかなかったので、私は仮の数字を当てはめて、実際にいくらになるのか計算してみました。

標準報酬月額を28万円と仮定すると、28万円÷30日×2/3で、1日あたりの支給額はおよそ6,222円になります。1年6か月分(約548日)をフルに受給した場合の総支給額は、単純計算でおよそ341万円です。

私が計算してみて実感したのは、ここから社会保険料と住民税が差し引かれるという点です。金額の大きさに安心してしまいがちですが、私は「額面」と「手取り」を分けて考える習慣を持っておきたいと思いました。あくまで標準報酬月額28万円という一例なので、自分の金額に置き換えて確認することをおすすめします。

他制度との関係——労災・障害年金・失業保険との調整

PIC5|労災保険 障害年金 比較表を見て整理する女性

傷病手当金は、関連する他の社会保障制度との間で併給調整のルールが定められています。

労災保険・障害年金との比較表

比較項目傷病手当金(健康保険)労災保険(休業補償給付)障害厚生年金/障害基礎年金
対象事由業務外の病気・ケガ業務上・通勤中の病気・ケガ病気・ケガによる一定の障害状態
支給額目安給与の約2/3(非課税)給与基礎日額の約80%(非課税)障害等級と納付記録による
支給期間通算1年6か月治癒まで無期限障害状態が続く限り
併給調整労災適用時は受給不可傷病手当金より優先年金優先で差額支給

失業保険との同時受給不可という原則

特に注意したいのは、障害年金との併給調整は「月額」ではなく「年金額÷360」の日額ベースで厳密に計算される点です。また失業保険(基本手当)は「いつでも働ける状態」が前提となる制度であるため、傷病手当金とは同時受給ができません。退職後すぐに働けない場合は、ハローワークで受給期間延長手続きを行い、最長3年間(本来の1年と合わせて4年間)失業保険の受給権を保留する選択肢があります。

老後の生活設計という観点では、厚生年金の仕組みを把握しておくことも、社会保険制度全体を理解する上で役立ちます。

受給権を失う代表的な構造的リスク

PIC6|受給権 構造的リスク チェックリストを確認する女性

制度の運用上、知識不足によって受給権そのものを失うリスクがいくつか存在します。

5つの構造的リスク一覧

  • 退職日の出勤:退職後も継続給付を受けるには「退職日当日に労務不能であること」が条件で、数時間の出勤でも「労務可能」と判定され、以降の受給権(最大1年半分)が消滅する
  • 加入期間の不足:退職日までに継続して1年以上の被保険者期間がないと、退職後の継続給付は受けられない
  • 待期期間の不成立:連続3日間の休業が成立しないと、待期期間自体がリセットされる
  • 副業・労働行為:手渡しのアルバイトであっても、給与支払報告書の提出やマイナンバー連携により発覚するケースがある
  • 社会的治癒の判定:同一傷病での2回目の受給には「社会的治癒」(数年間の就労・通院なし)が事実上必要とされる

注意すべき悪質業者の存在

相談件数3年で5倍──国民生活センターの注意喚起

近年、「社会保険を活用して最大200万円受給」といった広告で勧誘する「退職給付金申請サポート」業者が増加しています。国民生活センターは2025年12月3日付で正式な注意喚起文書を公表しており、同センターへの相談受付件数は3年間で5倍超に膨らんでいると記録されています。

虚偽申請は本人も詐欺罪に問われるリスク

実態として、精神的な不調がないにもかかわらず指定クリニックを受診させ、虚偽の診断書を取得させる「不正受給の指南」であるケースが確認されています。失業保険や傷病手当金は行政機関の厳格な審査によって決定されるものであり、民間業者が受給額の増額を保証することは制度上不可能です。虚偽の内容で申請を行った場合、業者だけでなく申請者本人が詐欺罪に問われ、受給額の全額返還とペナルティが科されるリスクがあります。

まとめ——制度を正しく理解することが最大の防衛策

傷病手当金は「給与の3分の2」という一言で説明されがちですが、実際には社会保険料・住民税を含めた実質手取りの把握、2022年の通算制度への理解、退職・失業保険との関係性の整理まで含めて捉える必要がある制度です。構造を正しく理解しておくことが、受給権を失わないための最大の防衛策になります。

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よくある質問

傷病手当金 給与の3分の2 仕組みを整理して資料を見つめる女性

Q. 傷病手当金は本当に給与の3分の2もらえるのか?

支給額自体は標準報酬月額の3分の2相当ですが、社会保険料・住民税は別途差し引かれるため、実質手取りはそれより少なくなります。

Q. 支給期間の「通算1年6か月」とはどういう意味か?

2022年の法改正により、復職期間も挟みながら、支給開始日からトータルで1年6か月分の枠を使える仕組みに変更されました。

Q. 障害年金と傷病手当金は同時にもらえるか?

可能ですが、障害年金が優先され、傷病手当金は「年金額÷360」の日額ベースで計算した差額のみが支給されます。

Q. 失業保険と傷病手当金はどちらを先にもらうべきか?

働けない間は傷病手当金を受け、その後ハローワークで受給期間延長手続きを行い、回復後に失業保険へ切り替えるのが一般的な流れです。

Q. 退職後に傷病手当金を受け取るための条件は?

退職日までに継続して1年以上の被保険者期間があり、退職日時点で受給条件を満たし、退職日当日に労務不能(出勤していない)であることが必要です。

Q. 同一の病気で2回目の受給は可能か?

同一傷病として扱われる限り、通算1年6か月の受給上限を超えて給付を受けることはできません。「社会的治癒」(医療的治癒と異なり、長期間就労し通院も途絶えた状態)が認定されて初めて、新たな疾病として改めて受給が開始されます。

Q. 健保組合の「付加給付」とは何か?

大企業の健康保険組合が独自に上乗せする給付で、法定の2/3に加えて支給され、給与の80%程度まで補償されるケースがあります。退職後の継続給付では原則打ち切られます。

Q. 「退職給付金サポート」業者を利用するとどうなるか?

不正受給の指南を受けるリスクがあり、虚偽申請が発覚すれば申請者本人が詐欺罪に問われ、受給額の全額返還とペナルティが科される可能性があります。

Q. 精神疾患の受給者はどのくらいの割合を占めるか?

協会けんぽの統計では「精神及び行動の障害」が全体の約39.15%を占め、最多の受給理由となっています。

Q. 老齢年金を受給しながら傷病手当金はもらえるか?

60歳以上で退職後の継続給付を受ける場合、老齢年金を受給していると傷病手当金は支給停止または差額調整されます。

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