📌 この記事が30秒でわかる!3行まとめ
- 防衛特別法人税は2026年4月開始、基準法人税額から500万円を控除した額に4%課税
- 課税所得がおおむね2,400万円を超えない中小法人は実質税額ゼロ
- 税額ゼロでも別表一次葉一によるゼロ申告義務があり、資産評価にも波及する
2026年4月から「防衛特別法人税」という新しい税金が始まります。ニュースで見かけて「うちの会社にも関係あるのかな」と気になった方も多いのではないでしょうか。私も最初に制度の資料を読んだとき、正直「また新しい税金の名前が増えた」くらいにしか思っていませんでした。でも仕組みを整理してみると、500万円という一つの数字を境に、対象になる会社とならない会社がはっきり分かれる、意外とシンプルな制度だとわかってきました。今日は「誰が対象で」「いくら払うのか」を、実際の数字で確認しながら整理していきます。
防衛特別法人税とは?いつから始まる制度なのか

防衛特別法人税は、2026年(令和8年)4月1日以後に開始する事業年度から適用される新しい税制です。名前から「法人税率が上がるのかな」とイメージする方もいるかもしれませんが、実際は少し違う仕組みになっています。
法人税率の引き上げではなく「付加税」方式
この制度は、既存の法人税率そのものを引き上げるのではなく、すでに計算された法人税額の上に、新たな税額を上乗せする「付加税」という方式を採用しています。具体的には、税額控除を適用する前の「基準法人税額」から、年500万円の基礎控除額を差し引いた金額に対して、4%の税率をかけて計算します。この「基準法人税額から500万円を引く」という一手間が、この制度を理解するうえで一番重要なポイントです。
なぜ500万円の基礎控除が設けられたのか
背景には、中小企業への配慮があります。防衛力強化の財源を確保する必要がある一方で、体力の小さい中小企業にまで一律に負担を求めると、経営への影響が大きすぎます。そこで、一定額までの法人税額には課税しない「基礎控除」という仕組みを設けることで、負担を実質的に大企業・中堅企業に絞り込む設計になっています。私は最初、控除額が500万円と聞いても実感がわかなかったのですが、実際の課税所得に置き換えて計算してみると、想像していたより線引きがはっきりしていることに気づきました。
500万円控除で「対象企業」がすぐ分かる境界線

ここが今回一番お伝えしたいポイントです。基準法人税額から500万円を差し引いた金額がプラスにならない会社は、防衛特別法人税の負担が発生しません。では、具体的にどのくらいの規模の会社が対象になるのでしょうか。
実際に3パターンで計算してみた
資本金1億円以下の中小法人に適用される軽減税率(年800万円以下の所得部分は15%)をもとに、実際に課税所得別の負担額を計算してみました。
- 中小企業A(課税所得1,500万円):基準法人税額 約260万円 → 500万円控除後の課税標準は0円 → 防衛特別法人税は0円
- 中堅企業B(課税所得3,000万円):基準法人税額 約630万円 → 控除後の課税標準は130万円 → 防衛特別法人税は約5.2万円(130万円×4%)
- 大企業C(課税所得10億円):基準法人税額 約2.3億円 → 控除後の課税標準は2億2,500万円 → 防衛特別法人税は約900万円(2億2,500万円×4%)
計算式は「(基準法人税額-500万円)×4%」で統一されています。この式に当てはめると、基準法人税額が500万円を超えるかどうかが最初の分かれ目になるとわかります。軽減税率を前提にすると、課税所得がおおむね2,400万円を超える法人でないと基準法人税額が500万円を超えないため、多くの零細・中小企業にとっては実質的に負担ゼロの制度だと言えます。私自身、この試算をするまでは「新しい税金=みんな負担が増える」というイメージを持っていましたが、数字で確認すると印象が大きく変わりました。
対象になりやすい業種・規模の傾向
課税所得が2,400万円を超えてくるのは、従業員数十名規模で安定的に利益を出している中堅企業や、資本金1億円を超える企業が中心になります。逆に、開業間もない企業や、投資フェーズで利益が出にくい企業は対象になりにくい傾向があります。自社が対象になるかどうかを見極めるには、直近の決算書から基準法人税額を逆算してみるのが確実です。
ゼロ申告義務と経理・資産評価への影響

「税額が0円ならうちの会社は関係ない」と思ってしまいそうですが、そこに一つ落とし穴があります。防衛特別法人税は、たとえ税額がゼロであっても、専用の申告書(別表一次葉一)を添付して「ゼロ申告」を行うことが義務付けられています。
税額ゼロでも申告書の提出は必須
これは、対象企業だけでなく事実上すべての法人に経理実務上の対応が求められることを意味します。申告漏れとみなされるリスクもあるため、顧問税理士との事前確認が欠かせません。また、大企業や中堅企業では、税効果会計における法定実効税率の見直しが必要になり、繰延税金資産・繰延税金負債の再計算が求められる点にも注意が必要です。
相続・事業承継実務への波及にも注意
防衛特別法人税の創設は、一見無関係に見える資産評価の実務にも影響を及ぼしています。2026年4月1日以降の相続・贈与における非上場株式の評価(純資産価額方式)では、評価差額から控除する「法人税額等相当額」の割合が、従来の37%から38%へ引き上げられました。国税庁はこの控除割合を、防衛特別法人税の基礎控除を加味せず一律に適用するとしており、事業承継やM&Aの実務担当者にとっては見落とせない改正点です。こうして整理してみると、防衛特別法人税は単なる「新しい税金」ではなく、法人税申告・税効果会計・資産評価という複数の実務領域に横断的に影響する制度だとわかります。私自身、調べる前は「税額がゼロなら関係ない」と思い込んでいましたが、ゼロ申告義務や資産評価への波及を知って、認識を改めました。
なぜ今、年間4兆円もの追加財源が必要なのか

そもそも、なぜこれほどの財源を新たに確保する必要があるのか。背景を整理すると、2022年12月に政府が決定した「安保3文書」に行き着きます。2023年度からの5年間で防衛力整備に必要な経費の総額を「43兆円程度」とし、2027年度時点でGDP比2%(NATO加盟国が目標とする水準)に到達させる方針が示されました。この目標を達成するには、2022年度当初予算と比較して「年間約4兆円」の追加財源が恒久的に必要になります。
4兆円の内訳を整理してみた
政府はこの4兆円を、単一の財源ではなく4本柱で確保する計画です。
- 歳出改革:1兆円強(非社会保障関係費を中心とした歳出改革の継続)
- 決算剰余金:0.7兆円程度(国債償還財源等を除いた純剰余金の半分を毎年度充当)
- 防衛力強化資金:0.9兆円程度(国有財産売却益や特別会計からの繰入金などの税外収入)
- 税制措置(増税):1兆円強(法人税・所得税・たばこ税の段階的増税)
このうち「防衛力強化資金」の中身を見てみると、外国為替資金特別会計や財政投融資特別会計からの繰り入れに加え、東京都千代田区の大型複合ビル「大手町プレイス」の政府保有分売却収入(約4,164億円)や、中小企業向け新型コロナ対策基金の返納金(約2,350億円)まで組み込まれています。私はこの内訳を調べてみて、増税だけでなく、あらゆる税外収入をかき集めて財源を組み立てている実態に驚きました。防衛特別法人税は、この4本柱のうち「税制措置」の一部を占める制度だと位置づけると理解しやすくなります。
建設国債という異例の財源も併用されている
財源確保の手法としてもう一つ見逃せないのが、建設国債の活用です。財政法4条は赤字国債の発行を禁じる一方で建設国債は例外的に認めていますが、防衛費に建設国債を充てることは長らくタブーとされてきました。1966年には当時の大蔵大臣が「公債を軍事目的に活用することは絶対にしない」と国会で答弁していたほどです。しかし2023年度予算から、自衛隊の艦船や潜水艦、施設強靭化に建設国債が充てられるようになり、この歴史的な原則が転換点を迎えています。
なぜ消費税ではなく法人税が選ばれたのか、海外との比較も整理してみた

今回の防衛財源確保では、年間1兆円規模のうち約7,000億〜8,000億円規模が法人税で賄われる設計になっています。安定した税収が見込める消費税ではなく、法人税が主軸に据えられたのはなぜでしょうか。
国内での理由を整理してみた
背景を整理すると、大きく二つの理由が見えてきます。一つは、物価高が続く中で逆進性の高い消費税を引き上げると、個人消費を冷え込ませるリスクが大きいというマクロ経済上の判断です。もう一つは「受益者負担の原則」です。安全保障環境の安定やシーレーン(海上交通路)の安全確保は、グローバルにサプライチェーンを展開する企業にとって直接的な恩恵になります。過去最高水準の経常利益を記録している法人部門に相応の負担を求めることは、社会的な合意を得やすいと判断されたと考えられます。加えて、消費税増税は過去の政権で幾度も内閣支持率の急落を招いてきた経緯があり、政治的なハードルの高さも大きく影響しています。
海外の財源確保との比較
海外に目を向けると、財源の確保方法にも国ごとの違いが見えてきます。ドイツは1,000億ユーロ(約16兆円)規模の「連邦軍特別基金」を創設し、憲法改正によって財政規律(債務ブレーキ)を一時的に免除して国債で調達する道を選びました。台湾は2026年から2033年にかけて総額1兆2,500億台湾ドル(約6兆円超)の防衛特別予算を組む計画を進めています。一方で日本は、赤字国債への依存を前面に出さず、税制措置と歳出改革のパッケージで恒久財源を確保するという、財政規律を強く意識した手法を採用している点が特徴的です。3か国を並べてみると、同じ「防衛費の増額」でも、国債中心のドイツ、特別予算中心の台湾、税制措置中心の日本と、財政運営の考え方の違いがくっきり見えてきて、私はこの比較が一番興味深いと感じました。
制度の背景をもう少し広く知りたい方は、財源確保の仕組み全体を整理したこちらの記事もあわせてどうぞ。
→ マイナンバー現金給付ニュースの正体|給付システム整備と年金口座自動登録の違いを整理
制度の数字を実際に検証するという意味では、こちらの記事の切り口も参考になると思います。
→ 年金破綻のウソ?財政検証でわかった所得代替率61.2%の実態
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よくある質問

Q. 防衛特別法人税とはどのような制度ですか?
2026年4月1日以後に開始する事業年度から適用される新しい税制で、既存の法人税額に一定割合を上乗せする「付加税」です。基準法人税額から年500万円を控除した金額に4%を乗じて計算します。
Q. どのような会社が対象になりますか?
基準法人税額が500万円を超える法人が対象です。中小企業の軽減税率を前提にすると、課税所得がおおむね2,400万円を超える法人が目安になります。
Q. なぜ500万円の基礎控除が設けられたのですか?
体力の小さい中小企業への配慮です。一定額までの法人税額には課税しないことで、負担を実質的に大企業・中堅企業に絞り込む設計になっています。
Q. 税額が0円でも申告は必要ですか?
必要です。専用の申告書(別表一次葉一)を添付してゼロ申告を行う義務があり、対応しない場合は申告漏れとみなされるリスクがあります。
Q. なぜ消費税ではなく法人税が財源に選ばれたのですか?
物価高の中での消費税引き上げは個人消費への打撃が大きいこと、安全保障の恩恵を受ける法人部門に負担を求める「受益者負担」の考え方があること、消費税増税自体の政治的ハードルの高さが背景にあります。
Q. 大企業への影響はどのくらいですか?
課税所得10億円規模の大企業を試算すると、防衛特別法人税は年間約900万円になります。基準法人税額から500万円を控除した後の金額に4%を乗じて計算されます。
Q. 税効果会計への影響はありますか?
あります。法定実効税率が上昇するため、繰延税金資産・繰延税金負債の再計算が必要になる企業があります。
Q. 事業承継や相続の実務にも関係しますか?
関係します。2026年4月以降の非上場株式の評価において、控除する法人税額等相当額の割合が37%から38%に引き上げられています。
Q. 防衛特別法人税はどのくらいの財源規模を占めますか?
年間約1兆円規模の増税分のうち、法人税は約7,000億〜8,000億円規模を占める見込みです。
Q. 個人の税負担にも別の制度がありますか?
はい。個人の所得税には2027年1月から「防衛特別所得税」が別途導入される予定で、こちらは基準所得税額に1%を上乗せする仕組みです。
参考・出典
- 財務省「我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案」
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/houjin/240208boueizeisei.html - 国税庁「防衛特別法人税が創設されました」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/boueitokubetsu.htm - 国税庁「防衛特別所得税及び復興特別所得税(源泉徴収関係)Q&A」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0025004-047.pdf - 防衛省「令和7年版防衛白書|6 防衛力強化のための財源確保」
https://www.mod.go.jp/j/publication/wp/wp2025/html/n230301000.html - 衆議院「我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法について」
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